第29話 本気出せ

唯香を家まで送り届けた


唯香は

いつも通り

明るく

サッパリとした表情で


「ありがとう」唯香


唯香の部屋のある

二階に上がる階段の前で言った


今日の俺が変だから

警戒されてしまったのか?


部屋の前まで送ると

上がり込むのでは…と

思ったのか?


平常な空気を出してくれていても

行動が

そう思わせる


唯香

嫌だったのかな…


俺はこれ以上

困らせたくなくて


「じゃ」愁


あっさり

帰宅の路についた


帰り道

不完全燃焼で

悶々としていた

色々と考えてしまうけど

なるだけ

考えないように

少し足早に歩いた


俺は自分の宿泊するホテルへ帰った


シャワーを浴びて

ベッドに転がる


・・・今日は疲れた・・・


だけど

眠れないでいた


スマホがなる


手に取ってみると

幸助からメール


”今、一人?”


なんだコイツ

見てるの?


そう思うくらい

ジャストなタイミングでメールが来るから

まわりを見渡す


いるわけないか


ちょっと笑って

返信する


”そうだよ”


幸助はすぐに電話をかけてきた


「どうだった?」幸助


「っていうか

お前、タイミングが良すぎ

見られてるかと思った」愁


「だいたい分かるだろ

唯香をおくって

その勢いで上がり込むなんて

お前にはできないだろうから

ホテルに帰ってるか

フラフラしてるかのどっちかだろ!!」幸助


「お前、すごいな」愁


「すごくない

分かる

お前の事は!!

何年、親友してると思ってんだよ」幸助


「・・・だめだったよ」愁


幸助は一旦

言葉を止める


「そっか・・・なんだって?」幸助


「簡単に言うなってキレられた」愁


俺は唯香とのやり取りを

幸助にはなした


幸助はしばらく考えて


「っで、簡単にあきらめるか?」幸助


「・・・いや・・・明日、もう一回

会いに行ってくる」愁


「そっか

よかった

お前が本気になってきたみたいで

その確認できたし

もう俺はノータッチだから」幸助


「俺の心配して電話くれたんじゃねーの?」愁


「何でおれが男の心配して夜中に電話しなきゃいけないんだよ!

唯香の心配に決まってんだろ

唯香がお前からちゃんと思われてるか?その心配だよ」幸助


そうだよな

幸助ずっと唯香を思ってるんだよな


「そっか」愁


幸助は最後に真剣な声で


「頑張れよ

あきらめるな

本気で当たれ!!」幸助


幸助はそう言った


その声が

心にしみて


もう一度

会いに行く勇気が増した


幸助

頑張るよ


俺、お前の気持ち

無駄にしない!!


そう思うと

それからはぐっすり眠れた


翌朝、俺はルーティーンのランニングをする前に唯香にメールした


”今日、会いたい”


走りながらもスマホが気になるけど

返信は直ぐに来ない

ちょこちょこスマホを見てしまう


あんなメール

“会いたい“なんて

友達から

友達だと思っている男から言われて

困ってるのかな?


“もう少し話したいから…“

みたいに

ソフトな感じで送ればよかったかな?


既読にはなっている


もう、取り消せない


唯香から

少し時間がかかったけど返信が来た


”今日は無理

愁はoffだろうけど

私、忙しいからね”


返信に嬉しくて

俺は直ぐにメールする


”何時になっても良い

マジで会いたい

会って話がしたい”


必死


こんなメールしたことないよ

文面に赤面


唯香から返信がない


呆れられてしまったのかも


それから昼頃

やっと返信


”もうやめて

そういうの

なんかむず痒い”


俺だってそう思うよ

つい最近まで

男友達と変わらない感じで

唯香の事見ていたんだから


でも

お前が言ったんだろ!本気出せって


唯香からのメールを返さず

俺は

動き出すことにした



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る