第8話 マネージャー
俺はグラグラと揺れる不安定な感情を抑える
少しでも彼女にそれを見せてしまうと
いけない気がして・・・
幸助の言葉を思う
”束縛とかじゃなく
しっかりつかまえておく”
奏への感情を抑え平常心を保とうとしている
これからしばらく
俺は忙しい時期に入る
これまでだって
忙しかったけど
それ以上にだ
と言う事は
奏とは会えない
連絡だって
簡単にはとれるわけがない
不安だ
不安だ
不安だ
信じるしかない・・・俺たちの関係を
奏での事を・・・
今は俺のするべきことに集中しなくては!!
俺にはこのチームを優勝させるという目標がある
その目標の先には
プロへ進むという夢
そうなるためのアプローチなんだ
それを
一歩一歩確実にしていくために
サッカーに対して不実に向き合いたくない
頭が固いのかもしれない
彼女と上手くやっていながら・・・
女の子とフラフラ遊びながら・・・
ちゃんとレギュラーとって
こなせる奴だっている
だけど
俺は違うことは俺が一番よく知っている
先輩からの期待や
友達からの信頼は
今までしてきた努力によって築き上げられたんだ
それは生半可なことではない
皆は俺を勘違いした評価をしてくれる
俺は天才ではないんだ
俺が持っているとしたら
努力を積み重ねるという才能
それしかないんだ
だから
今は集中して頑張る
集中だ集中
努力する
かっこいい自分になるために
今は泥臭くなってみせる
女の子には分かってもらえるのか?
それは
奏の受け止め方次第になるのだけど
奏・・・どう考えるのかな?
会えないうちに
要くんは急接近したりするかな?
会えていない事を知って
チャンスだって思うかな?
奏でも
そばにいてくれる要くんにもたれ掛りたくなるのかな?
彼氏であっても
彼氏のようなこと
何にもできていない俺なんかより
楽しい時も悲しい時も一緒に居て共感してくれる
寄り添ってくれる相手が愛おしくなったりするのかな?
遠くの美人より近くのぶすって言葉あったよな
誰の言葉だっけ?
酷い言い草だよな・・・
要くんは不細工でもなかったし
俺、美男でもないし
そんな事あてはめたら
勝ち目無いじゃん!!
ダメだダメだ!!!
そんな事を考えている場合ではない
集中だ!!!
俺ができるのは
毎日
日記のように一方的な文章を
奏にメールすることぐらいしかなかった
奏は
それに対して
毎日、朝
返信をくれた
俺は
朝練の後
シャワーを浴びてから
それを見るのがルーティーンとなっていて
それはとても癒されて
次への原動力になっていた
授業中は眠ってしまう
ヘトヘトに疲れてしまって
そうでもしなければ
夕方からの練習には耐えられない気がして・・・
先生も理解があって
気が付かない振りをしてくれるから
ありがたい
もっと助かっているのは
唯香(ゆいか)だ
唯香は実家の近所に住む幼馴染
小学校・中学校そして今まで同じ学校
小さな頃は男勝りで
俺たちとサッカーをして遊んでいて
サッカークラブでも一緒だった
俺はずっとあいつの事を女だなんて思っていなかった
そこらの男より
よっぽどサッカー上手かったし
情熱もあった
中学校になって
唯香の制服のスカートが笑えて
からかって
大喧嘩をした
なぜか中学校の部活ではプレーヤーではなくマネージャーとして
俺たちを支えてくれた
部活に女子サッカーは無かったけど
クラブチームにでも入るものだとみんな思っていた
あいつならテストも合格できる才能があったから
高校では別になるのかと思っていたけど
幸助同様
腐れ縁的な仲間で
同じ学校へ入学し
今もマネージャーとして居てくれる
俺たちにとっては安心する存在だ
そんな唯香は成績も優秀だから
いつも俺たちの学習面もサポートしてくれる
特に
全く授業を聞けない俺と幸助に
ノートを分かりやすくまとめて
くれるだけではなく
テスト前には勉強会までしてくれる
あいつがいるから
俺たちは追試をまぬがれて
部活に専念できているんだ
今日も唯香は部活前に1週間分のの授業ノートをくれた
「愁、次のテストはヤバいからね
幸助と一緒に来週は勉強会するよ!!
それまでに
ノート見ておいてね」唯香
「ありがとう
助かる」愁
そう言ったら
唯香はにっこり笑って部室へ先に行った
あいつだって
忙しいのに
こんな事までサポートしてくれて
ありがたい
俺と幸助はとくに
感謝しなきゃな・・・
照れくさくて伝えたことは無いけど
いつも思っている
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