第4話 弟
俺と奏が付き合うようになるまでに
時間はかからなかった
俺たちは恋愛に不馴れだけど
お互いの趣味嗜好は異なるけれど
お互いを必要とする
何か見えない力で引き合っていた
学校と部活を終えて
寮に戻ると
ほぼ毎日メールした
返信はその日のうちに
あったり無かったり
やはり個性的な彼女は
掴めなくて
そこがまた、魅力的で
俺はよくニヤニヤとスマホを見つめていた
練習や試合が忙しくて
デートの様なことはできなかった
だけど、会いたいから
夕食後
ランニングを兼ねて
五キロ先のあの公園へ会いに行った
俺の方に門限があるから
時間は30分くらいしかなかった
「家まで送るよ」愁
と言うけど
奏は首を縦には振ることはなかった
あまり
知られたくない様子で
俺も嫌がる事を強引にしたくないから
無理強いはしなかった
そんな彼女も半年位したら
家の灯りが見えるところまで
送らせてくれるようになった
けっこうな豪邸でビビったけど
奏らしい
奏によく似合っている環境だと俺は思った
俺は奏が小さく手を振って門の中に入るところまで見ると
寮に戻ろうと振りかえる
すると、
見知らぬ少年が立っていた
「あの…今の…あの家に入っていった女の人と知り合いですか❓️」少年
俺はうなずいて
「そうだけど…何か❓️」愁
彼は微妙な顔をして
「恋人ですか❓️」少年
俺は、うなずく
「俺、奏の弟の智也(ともなり)です
少しお話しいいですか❓️」智也
俺はとても驚いて声を出すことなくうなずく
時間はなかったけど
智也くんの神妙な表情をみて
はなしを聞くべきだと感じたので
また、あの公園へ戻り
俺と智也くんは滑り台横のベンチに座ってはなしを始めた
「あの…姉ちゃんは前の恋人から
ひどい目にあっていて
俺はしばらくは
恋愛なんてしてほしくなくて…」智也
ひどい目…
どんな事があったのだろうか❓️
聞いても良いのだろうか❓️
「最近、帰りが遅い日が多いし
姉ちゃんには聞きづらくて
でも、心配で
また傷ついてほしくないんです
弟として」智也
「あの…何があったの❓️
聞いてもいいのかな❓️」愁
智也は言いずらそうに話し始めた
「束縛が厳しい人で
姉ちゃんが他の男の友達と会うのいやがったり
スカートはくの禁止したり
電話でなかったら
“浮気だ“って怒ったりして
暴力なんてなかったけど
心はかなり苦しめられてて
最後はあの男が浮気して別れたんです
別れ際に
“お前がさせないから‼️“
って捨て台詞吐かれたそうです
俺は弟だから
姉ちゃんに聞いた訳じゃなくて
姉ちゃんの友達に聞いたんですけど…
あっ俺の彼女は姉ちゃん友達なんで…」智也
智也くんはとても不安げに俺に話した
俺は智也くんに信用してほしくて
そして、安心もしてほしくて
「お姉さんの事
大切にするよ
約束する」愁
言葉は上手くもないけど
そのときに言える最大限の誠実な思いを伝えた
すると、智也くんは安心したようにニッコリ笑って
頭を下げて
「宜しくお願いします」智也
そう言って帰っていった
俺は嬉しかった
奏はあまり自分の事をたくさん話すタイプではないから
付き合う以前の事はもちろん
弟の智也くんの事だって知らなかった
なんだか彼氏として
一つ進めた気がしていた
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