第6話 まさかの状況
あれから毎日のように奏の事を考えていた
正直
サッカーに身が入らない
要くんという人も気になる
会ったことがないだけに
想像ばかりが頭をよぎる
今日は久しぶりに奏に会いに行ける
最近は忙しくて
毎日くたくたで自主ランニングもできなかったから
メールもなかなかニアミス気味
送信して
爆睡
そして目が覚めた時に返信を見るから
どうも話は噛み合ってはいない
先輩が言うように
そんな状態では女の子としてはつまらない相手なのかもしれない
”二股”って言葉を考える
どんな状況なんだよ!!
考えれば考えるほど言葉がエロい
だって二股だよ
二つの股・・・えっ?
俺、欲求不満だな・・・
そんな事を考えては消しながら
走る
奏に会うために
待ち合わせの公園
早く着きすぎた
俺・・・どれだけ楽しみにしてるんだよ
奏に会えた時に
むしゃくしゃした妄想をぶつけてしまわないように
頭を空っぽにしたい
そう思って
俺は筋トレしながら彼女を待つ
しばらく待つと
彼女が現れた
「久しぶりだね」奏
笑顔が良い
やっぱり会えると嬉しい
今までの思いは軽く吹っ飛んだ
何でもない話をする
最近、あった事をお互いに話すけど
共通の話題がないから時々みょうな空気感で
俺はそれでも奏が話すことが新しくて
彼女を知れることが嬉しくて
どんだけ好きになってるんだ!!って
突っ込みを入れてしまうほどだ
時間がたつのは早くて
日も暮れ始めた
「そろそろ行かなきゃ」奏
奏は時計を見た
「そっか、じゃ家まで送るよ」愁
俺がそう言うと奏は首を横に振る
「今日は大丈夫」奏
「そうなの?」愁
「今から友達と約束があるの
一緒に勉強しようって言われてて
愁くんと今日ここで会うって言ったら
じゃ18時に迎えに来るって・・・
もうすぐ来ると思う」奏
すると奏は
公園入口の方に手を振る
その後
奏は俺にとって衝撃的な状況を
何のためらいもなく屈託ない笑顔で見せつける
若干小走りでこちらに駆けてくる男
短髪の黒髪は今流行りのスタイルにセットされていて
清潔感がある笑顔
細身ではあるけど筋肉質なことは制服を着ていても分かる
俺たちの前に立った
「愁くん、紹介するね
神崎 要くん」奏
奏の口からでたその言葉が
俺には聞き取れないでいた
いや、聞き取るのを拒否しているから
聞こえないふりをしていたのかもしれない
要くん
それって
それってさ・・・
そんな笑顔で俺に紹介するの?
要くんは礼儀正しい姿勢で俺に頭を下げる
「愁くんだよね
奏から聞いてます」要
か・な・で
って言った
呼び捨て・・・
これってどういう状況?
「今日は久しぶりに愁くんに会うって言ってたから
どうしようかって思ったけど
もうすぐテストだから
その後でも一緒に勉強しようって
俺が誘ったんです
だから
帰りもしっかり家まで送るんで
安心してください」要
笑顔がまぶしい
太陽のようだ
俺にとっては
それが気持ちが悪くて
言葉は出ない
”安心してください”って
何を安心したらいいんだ!!
お前が安心じゃないよ
それに
なんて言ったらいい?
”そっか・・・宜しくね”
”そうだよね
テスト大事だもんね”
そう言ったらいいのか?
だけど
ここで嫉妬心をむき出しにできるような小さな男っぷりを
彼女に見せたくない
そんな小さなプライドが俺から言葉を奪う
俺は小さく頷いて無口のまま奏を見る
奏はにっこり笑う
「じゃ、またメールするね」奏
そう言って今度は俺に手を振った
要くんは俺に小さく会釈をして奏を連れて行ってしまった
ただ並んで歩いているだけの二人だが
イチャイチャしているように感じてしまう
俺は今
何を見ているんだろう?
公園を出る間際
要くんは奏に気が付かれないほどに少しだけこちらを見た
その表情は確かに
俺から”勝ち”のようなものを奪い取った優越感の顔に思えた
目の前で彼女を奪われた俺は
この状況を納得させてくれる知恵は持っていない
只々むしゃくしゃして
この気持ちを心から引き離したくて
それから一時間
がむしゃらに走り続けた
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