第22話 ワインはロゼ
奏は、なれた口調で話し始めた
「愁くん
久々に会えてうれしかった」奏
ビールをけっこう多めに口に含む
少し泡が唇に残って
可愛らしい
グラスについた口紅をそっと指で撫でるように拭く仕草が
やたらこ慣れている
「テレビ局に入ったんだね」愁
奏はウンウンと頷いて体をくねらせ
なんだかセクシーだ
目が揺れるピアスを追ってしまう
「そう、大学生の時に
友達から進められてアナウンス学院に通ってね
アナウンサーになりたいって言うよりは
しっかり人前で話ができる人になりたくて
自分を変えたくてね
そうしたら
運よく
アナウンサーとして入社できてね
苦しいことも多くあったけど
なんとかここまで頑張ってきたの
でも、
頑張ってきてよかった
愁くんにこうして会えた」奏
キラキラしている
充実していることが見ているだけで分かった
「よかったね
今が充実してるみたいで」愁
「そうね
仕事はね
プライベートは寂しいものだけどね」奏
・・・そっか
どういう意味?
俺にどう言ってほしいのかな?
変な期待をしている・・・
「愁くんは?
どうしているの?」奏
「ああドイツでのサッカーは・・・」愁
俺がサッカーの事を話そうとしたら
奏は身を乗り出すようにして
俺をじっと見つめ
「サッカーの事は知ってる
言ったでしょ?
資料ちゃんと読んでるって!!」奏
えっ?少し切れた?
この子こんな表情もするんだ・・・新しい奏にドキッとする
「話しにくいかな?
じゃ、自己紹介スタイルで私の方からサラッと話すね」奏
ちょっと酔ってる?
奏は頬をピンク色にしてはきはき話し始めた
「愁くんと会えなくなって・・・振られて
私は直輝君とお付き合いをしたの
以前から直輝君は私の事を好いてくれていることを知っていたから
安心感があったし
彼がグイグイ来てくれたし
本音はね
愁くんに近づきたかった
後輩と付き合いだした元彼女を
一瞬でも嫉妬してほしかった
そんな下心があったの
でも
上手く行かないよね
そんな風に思いながら付き合ってるんだもん
直輝君・・・最終的には傷つけて
彼とも一年持たなかった
最後は
”奏ちゃん最低女だね”って言われちゃった」奏
何があったんだろう?
あんなに好きだった直輝が”最低女だ”なんて奏に言うなんて・・・
「何があったか気になってる顔だね
ま、子供じゃないし今だから言うけど
最中に名前読んだの・・・最低よね
彼、とっても怒ってね
途中でやめて無言で服着てね
私、何があったのかそれでも分かってなかったから
”どうしたの?”って聞いてね
そしたら
”毎回まいかい
やってる最中に愁さんの名前読んで気持ち良くなってる顔見せられて
限界だよ・・・俺
奏ちゃん最低女だね”
って言われちゃったの
言うよね
普通
言うよ
直輝君
間違いじゃない
私って最低女だって自分でも思ったもん」奏
毎回まいかいってそんなにって
サラッと
そんな風に言えるほど
奏は大人になったんだな・・・きっと
俺はまだ子供なのかもしれない
顔が赤くなっているのが自分でもよく分かった
直輝の事もよく知っているから
最中の話しを聞かされると
リアルに想像してしまう
「直輝と・・・結構早く進んだんだね」愁
俺、何言ってんだろう・・・
俺を見て奏はあっさり
「彼、積極的だったしね
それに私も初めてじゃなかったでしょ」奏
えっ?
そんな事”でしょ?”って言われても・・・
「ほら・・・あの時言ったじゃない
要くんと寝たって」奏
俺は心臓が止まるかと思った
”要くんの部屋で眠った”って聞いていたけど
”要くんと寝た”って・・・・言ってたか?
「それってあの日?
俺が電話して
奏が寝てて要くんが電話に出た日?」愁
奏ではにこりと笑って
「そうそう
最後までしたのはあの日」奏
俺は耳を疑った
それに
過去の話だとしても
何で笑ってるの?
「最後までしたのはって・・・したこともびっくりだし
その言い方だと
それ以前も・・・何かあってたの」愁
怖いもの見たさの気持ちで聞いた
奏は困った顔をして
「私、言ってなかったけ?
あの時、そこまで話したから愁くんに振られたんじゃなかったけ?」奏
奏どうやら思い込んでいたことが
俺の記憶とは違っていた事に若干
困惑しながらも
「要くんとはずっと触ったり触られたりの関係でね
私、一人になるのが怖くって
要くんは私の事思ってくれてる事知ってたから
寂しい時なんかには…ね
愁くんが好きだったんだどね
本命は愁くんだったんだけどね
なかなか会えないし上手く行かないし
勉強会の度にね
要くんの部屋でイチャイチャしててね
あの日までは制服の上から触る程度でね
スカートの中に手を入れようとしたら
”いや”って言ったら
要くんは優しいからいつも我慢してくれててね
あの日は私が誘いすぎちゃって・・・
彼、止まらなくなちゃったのね」奏
まじか?
奏って
そう言う子だったの?
俺の中の奏が崩れ始める
「要くんとは
それから何度か関係をもったけど
直ぐに別れた
ま、付き合ってはなかったから
別れたって言うのも変だけどね
直輝くん
束縛厳しかったからね
要くんも
もめ事とか嫌なタイプだったから
普通に後輩と付き合いだして
フェイドアウトしていったって感じ…
直輝くんと別れてからは
大学で一人
先輩でね
彼が社会人になって
すぐ二股かけられてね
相手の女性は会社の先輩で
気が付いたら
彼、相手の家に転がり込んでたらしくって
それを責めたら
あっけなく振られちゃった
”お前、可愛いだけで楽しくない”って
っで自暴自棄になってね
その後
社会に出て2人お付き合いした
どれも長くは続かないのよね
最後に付き合った人なんて
お互いに子供じゃないから
なんとなく
そんな関係になって
付き合っているつもりでいたけど
去年、急に”もう会えない”って言われたかと思ったら
私の後輩と結婚しちゃってね
子供ができたのがきっかけですって
結婚式に列席したのよ・・・私
だって
後輩に私と彼とが関係があった事を知られたら
せっかくの結婚にケチが付くでしょ」奏
奏はため息をつく
「さ、今度は愁くんの話しよ
私だって包み隠さずお話ししたんだから
話して」奏
奏はこちらをとろんとした目つきで見る
もうビールは2杯目のグラスを空にして
次はワインを注文した
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