概要
関ヶ原・岩流島・大坂の陣・天草四郎の乱・・・誰も書かなかった無三四
無三四は五輪書の最後の章を書き終えると、筆を取り落としてそのまま死の床についた。
夢うつつの中で、無三四は泉谷兵衛之亮一門と戦ったあとに、弟の捨丸と切れ切れに交わしたことばを思い出した。
「不様な試合じゃったな」
「なんの、いざとなったら助っ人に入ろうと思ったが、立派な勝利だった。今福の河川敷でふたりで有馬喜兵衛と戦ったはじめての果し合いを思い出した。兄者は十三で儂が十だった」
「遠い遠い昔の話じゃ。・・・捨丸、もはや戦国は終わったな」
「なんの。・・・兄者よ、われらが死ねば、そこですべてが終わるのだ」
「・・・そうか、それだけのことか」
【最終章「正保二年五月熊本(その16)」】
二刀をハの字にだらりと下げ、胸をせり出して突き進んでくる無三四に相対した兵衛之亮は、異形の構えにたじろいだ。
夢うつつの中で、無三四は泉谷兵衛之亮一門と戦ったあとに、弟の捨丸と切れ切れに交わしたことばを思い出した。
「不様な試合じゃったな」
「なんの、いざとなったら助っ人に入ろうと思ったが、立派な勝利だった。今福の河川敷でふたりで有馬喜兵衛と戦ったはじめての果し合いを思い出した。兄者は十三で儂が十だった」
「遠い遠い昔の話じゃ。・・・捨丸、もはや戦国は終わったな」
「なんの。・・・兄者よ、われらが死ねば、そこですべてが終わるのだ」
「・・・そうか、それだけのことか」
【最終章「正保二年五月熊本(その16)」】
二刀をハの字にだらりと下げ、胸をせり出して突き進んでくる無三四に相対した兵衛之亮は、異形の構えにたじろいだ。