概要
関ヶ原、大坂の冬夏、天草四郎の乱と、無三四と捨丸の兄弟は敵味方で戦った
無三四は、五輪書の最後の章句を書き終えて筆を置くと、そのまま死の床についた。
泉谷兵衛之亮一門と戦ったあとに捨丸と交わしたことばを、無三四は夢うつつの中で思い出した。
「不様な試合じゃったな」
「なんの、いざとなったら助っ人に入ろうと思ったが、見事な勝利だった。今福の河川敷でふたりで有馬喜兵衛と戦ったはじめての果し合いを思い出した。兄者は十三で儂が十だったな」
「遠い遠い昔の話じゃ。捨丸、・・・もはや戦国の世は終わったな」
「兄者よ、われらが死ねば、はじめてそこで終わるのだ」
「そうか、・・・それだけのことか」
完成した五輪書を寺尾孫之丞に形見分けに与えた無三四は、七日後の正保二年五月十九日、眠るように息を引き取った。
【その273(最終章)/正保二年五月熊本】
二刀をハの字にだらりと下げ
泉谷兵衛之亮一門と戦ったあとに捨丸と交わしたことばを、無三四は夢うつつの中で思い出した。
「不様な試合じゃったな」
「なんの、いざとなったら助っ人に入ろうと思ったが、見事な勝利だった。今福の河川敷でふたりで有馬喜兵衛と戦ったはじめての果し合いを思い出した。兄者は十三で儂が十だったな」
「遠い遠い昔の話じゃ。捨丸、・・・もはや戦国の世は終わったな」
「兄者よ、われらが死ねば、はじめてそこで終わるのだ」
「そうか、・・・それだけのことか」
完成した五輪書を寺尾孫之丞に形見分けに与えた無三四は、七日後の正保二年五月十九日、眠るように息を引き取った。
【その273(最終章)/正保二年五月熊本】
二刀をハの字にだらりと下げ