自分の意思で運命を切り開け。例えそこに道がなかったとしても
- ★★★ Excellent!!!
両親を亡くし、妹と二人で生きてきた敬介は、ある日突然妹の導きによりリスターンという異世界へ転移することに。右も左もわからぬ状態で白軍に助けられた敬介は、そこでこの地に伝わる神話を聞き、自身の前世を思い出します。
そこには、美しくも哀しい愛の物語がありました。
序盤は敬介の前世であるティスタと、王女であるセーレの悲恋から始まります。
身分違いであり、かつ国のために自身の本当の気持ちを圧し殺して意に添わぬ結婚をしなければならないセーレと、彼女を想うティスタ。全てを思い出した敬介は、この悲劇を繰り返してはならぬと戦いを終わらせることを決意します。
ですが、敬介は元々現世にいた只の男の子。目の前で繰り広げられる命のやり取りに怯え、戸惑い、逃げ出したくなりそうな気持ちを抱えながらも、リスターンで出会ったリラやエダーに支えられ、皆の思いを守るために立ち上がります。
敬介はチートスキルもなく、戦える強靭な肉体も持たない等身大の男の子。だからこそ読者は彼の弱い部分や悩み、葛藤を自分に置き換えながら読むことができます。怖じ気づきそうになりながらも必死で剣を手にする敬介の姿に、読者もきっと勇気をもらえるはず。
主人公の敬介だけではなく、他のキャラクターの過去や心情にもフォーカスをあてて書かれている為に、読んでいるうちに彼らを応援したくなります。
この地の神話を知り、前世の悲恋を知り、この不条理な世界で彼らはどのような結論をくだすのか、ぜひ一緒に見届けて頂きたいと思います。