人が互いを思いやる優しさに溢れた物語です。
優しさが足りないと思った時、何かを頑張りたいと思ったけど力が足りない時にきっと読んだ人の心を支えて元気づけてくれるような、そんな読後感の残るファンタジーです。
両親を亡くし、お互いを支え合いながら生きてきた敬介と妹のいおりの兄妹。物語は突然、意味深な台詞を発したいおりに異世界に召喚されるところから始まります。
チート能力なんて微塵もない敬介は不信がられたり、自分の無力感に苛まれたりしながらも、転生先の異世界での国をかけた戦争に参加していくことになります。
この作品の最大の魅力はも生き生きとした一人一人のキャラクターにあります。主人公の敬介を初め、国の歴史に残るほどの悲しい恋物語を残したティスタとセーレ。敬介が異世界で最初に出会い、行動を共にするリンガー王国王女のリラとエダー。敵として存在するバーツやサラリア、チェルノボーグ。それぞれが自分の信念、譲れないものを持ち、物語を推し進めて行きます。
なぜいおりは敬介を召喚したのか?いおりの正体は?強大なチェルノボーグに勝つ方法はあるのか?啓介は元の世界に戻れるのか?
敬介が召喚された理由を軸に、いくつもの戦いと敬介の成長を経て少しずつその謎が明らかになっていきます。
ファンタジーが好きな方にぜひお勧めしたい物語です。
社会人として、新たな一歩を踏み出そうとしていた主人公の敬介。
両親を早くに亡くし、施設で育った彼は妹のいおりのために働こうと、大学への進学を諦めて就職を選んだ——。
物語はそんな現代の兄妹の一場面から始まります。
しかし、突如として妹の発した不思議な言葉と共に、敬介は自分の住む世界とは全くの別世界へと飛ばされてしまう。
そこは二つの神と、その対立によって悲しい歴史が繰り返された場所だった。
いわゆる異世界転移もの、とはまたひとつ違った始まりから、物語のもう一人の主人公とも言えるティスタという兵士の記憶へ場面は移ります。
主人公と同じ目線になって世界を知ろう、妹を探そうと読んでいくと徐々に全てが繋がっていくという展開がとても面白いです。
初めて人を倒す剣をその手にとる等、沢山の決断を下し、一歩一歩強くなっていく敬介と飛ばされた先の世界で出会ったリラ王女やエダーとの関係も必見。
また、"白"と"黒"と対照的な陣営に見えますが、敵の抱えたモノが垣間見えるのも、一概に只の悪とは言えないところがまたこの世界の不条理なのかとも。
妹の正体は一体なんなのか。
この世界は白と黒のどちらかで染まりきるまで、この不条理な連鎖は止まらないのか——。
是非、彼らと一緒に旅してその行く末を見届けてほしいです。
両親を亡くし、妹と二人で生きてきた敬介は、ある日突然妹の導きによりリスターンという異世界へ転移することに。右も左もわからぬ状態で白軍に助けられた敬介は、そこでこの地に伝わる神話を聞き、自身の前世を思い出します。
そこには、美しくも哀しい愛の物語がありました。
序盤は敬介の前世であるティスタと、王女であるセーレの悲恋から始まります。
身分違いであり、かつ国のために自身の本当の気持ちを圧し殺して意に添わぬ結婚をしなければならないセーレと、彼女を想うティスタ。全てを思い出した敬介は、この悲劇を繰り返してはならぬと戦いを終わらせることを決意します。
ですが、敬介は元々現世にいた只の男の子。目の前で繰り広げられる命のやり取りに怯え、戸惑い、逃げ出したくなりそうな気持ちを抱えながらも、リスターンで出会ったリラやエダーに支えられ、皆の思いを守るために立ち上がります。
敬介はチートスキルもなく、戦える強靭な肉体も持たない等身大の男の子。だからこそ読者は彼の弱い部分や悩み、葛藤を自分に置き換えながら読むことができます。怖じ気づきそうになりながらも必死で剣を手にする敬介の姿に、読者もきっと勇気をもらえるはず。
主人公の敬介だけではなく、他のキャラクターの過去や心情にもフォーカスをあてて書かれている為に、読んでいるうちに彼らを応援したくなります。
この地の神話を知り、前世の悲恋を知り、この不条理な世界で彼らはどのような結論をくだすのか、ぜひ一緒に見届けて頂きたいと思います。
両親ともに失った二人きりの兄妹。妹思いの兄。
妹のために、卒業したらすぐに働きに出る事になっていた。
これからも妹のために頑張ろうと決心していた敬介だったが、妹の謎の言葉と共に光に包まれ……。
気が付いたら戦場だったという。
いきなり日常とかけ離れた戦いの場に投げ出された彼は、リラ王女に助けられ、そこでここは異世界である事を知るという導入で物語ははじまり、妹を探しながら神話の時代からの物語を紐解いていきます。
異世界転移物ではありますが、彼に驚異的なチート的な能力があるわけではありません。しかし彼には「過去」、いわゆる前世の物語があったという。
妹は何故、兄をこの世界に導いたのか。前世の彼の「選択」とは。
白と黒のそれぞれの神々の元での大きな戦いの中、過去の自分を知った上で敬介が見つけ出す真実はどのような世界を描き出すのか、わくわくと読み進められます。
主人公以外の登場人物それぞれにも物語があるという濃厚なハイファンタジー。ぜひ一読を!
本作の主人公である敬介は突如として、妹によって異世界に送られます。
そこは二つの国がそれぞれ違う神を信じ、長きに渡る争いが繰り広げられている世界。
主人公は転移後、わけがわからぬまま戦いに巻き込まれたところを一国の王女に助けられます。
そして、主人公は己の壮絶な前世を知ることになる。
この作品のおもしろいところは、主人公にしっかりした目標があるところです。
よくある「異世界に召喚されたから自分のやりたいことをする」や「王様や王女に頼られたから、頑張る」なんて惰性的な理由で行動することはありません。
主人公は、己の「妹」のことを考えながら行動します。
それは自分を召喚した妹の意図を知りたいがためか、それとも家族としての愛ゆえか……。
これから主人公は二国間の戦争に参加することになりそうですが、その戦いの末に主人公は何を得るのか?
妹と出会うことはできるのか?
非常に先が気になる作品です。
本作は高校の卒業を控え、児童養護施設を退所する主人公が、妹の不可解な宣言とともに異世界に飛ばされることから始まります。
ベロボーグとチェルノボーグという二柱の神を祀る世界では、王国と帝国の戦争が続いており、王国に保護された主人公は帝国からの密偵を疑われてしまいます。
やがて、夢の中で再会した妹の導きにより、主人公は不思議な光景を目の当たりにします。かつて、この世界で兵士として生きていた自分、そして巡り会った王女との切なく儚い恋の行方、その結末が明らかとなったとき、彼の新しい物語が幕を開けるのでした。
各話がそれほど長くなく、また文体も落ち着いて読みやすい構成となっており、すんなりと物語が染み込んでくると思います。
兵士と王女、兄と妹、二つの世界と人生の先に主人公は何を見るのか、今後の展開が楽しみな作品です。