第6話 心理テスト?
入浴を終えて大浴場から部屋に戻ると、友璃奈先輩は自分のベッドに腰かけ、私は友璃奈先輩のベッドに寝転んだ。
お風呂上りにこうしてふかふかのベッドに体を預けるのは、まさに至福の――
「なんであたしのベッドに寝転んでるのよ」
気持ちよくゴロゴロしていると、友璃奈先輩が呆れ気味にそう言った。
私は動きを止め、枕を抱っこしながら上体を起こす。
「友璃奈先輩のベッドってすごくいい匂いだから、自分のベッドより落ち着くんです」
「っ!? い、いい匂いだなんて、そんなこと……」
お風呂上りで紅潮していた頬が、その赤みを増す。
思ったことをそのまま言っただけなんだけど、なにかマズかったのかもしれない。
「あっ、お風呂の後だから汚くないですよ! 体の隅々までちゃんと洗いましたし、パジャマもきれいですから安心してください!」
「べ、別に蕾が汚いだなんて思ってないわ。ところで、その……あたしも、蕾のベッドで寝てみてもいい?」
「はいっ、もちろん!」
よかった。怒っているわけではないらしい。
友璃奈先輩は静かに立ち上がり、私のベッドに恐る恐る腰を下ろした。
そして深呼吸をした後、うつ伏せに寝転んで枕に顔を埋める。
「……ん、ありがと」
数秒としないうちに体を起こし、再び自分のベッドに腰かける友璃奈先輩。
「えっ、もういいんですか!?」
「ええ。思ったより、刺激が強――じゃなくて、同じ素材でも、自分のベッドじゃないと落ち着かないのよ」
「く、臭かったですか?」
刺激が強いと言いかけたのを、私は聞き逃さなかった。
「むしろ逆だから困ってるんだけど……まぁいいわ。この話は終わりにして、ちょっとした心理テストをするわよ」
「心理テスト! いいですねっ!」
唐突に話題が変わったけど、私のベッドが臭いというわけじゃなかったみたいだし、細かいことは気にしないでおこう。
「蕾はいま、付き合ってる人がいる?」
「いないです!」
最初の質問に、即答で答える。
するとなぜか、友璃奈先輩がホッとした表情で胸を撫で下ろした。
もし付き合っている人がいたら、悪い結果につながったのだろうか。
どういう結果に行きつくのか、胸がドキドキしてきた。
「じゃあ、恋愛に興味はある?」
「あります!」
未だに経験はないけど、だからこそ憧れは強い。
「へぇ、意外ね。ちなみに、同性は恋愛対象に入る?」
「そうですね、性別は気にしないです!」
「好みのタイプは?」
「うーん……難しいですね。好みのタイプ……むむむ……一緒にいて安心する人、かなぁ……」
「なるほどね、分かったわ」
友璃奈先輩はあごに手を当て、ふむふむとうなずく。
これで質問は終わりなのかな?
思い返してみると、恋愛に偏った心理テストだった気がする。
「……あたしにも、チャンスは…………よしっ……」
なにやら小声でつぶやきながら、友璃奈先輩がスッと立ち上がった。
いよいよ結果発表だろうかと身構える私をチラッと見た後、そのままベッドを離れてしまう。
「あ、あれ? 友璃奈先輩、どこに行くんですか?」
そう訊ねると、「お手洗い」と一言だけ返ってきた。
***
戻ってきた友璃奈先輩に心理テストの結果を教えてもらおうとしたところ、残念ながら答えを忘れてしまったらしい。
恋愛に特化した内容だったから、恋愛を経験することになったら自ずと答えが分かるのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます