第13話 むにむに

 大浴場から自室に戻り、ベッドに腰かけて一息つく。


「いいお湯でしたね、友璃奈先輩っ」


「そうね。蕾と一緒だから、なおさら気持ちよく感じたわ」


 友璃奈先輩が柔らかな笑顔を浮かべ、思わず録音したくなるぐらい嬉しいことを言ってくれた。


「嬉しいですっ、私も友璃奈先輩と一緒にお風呂入るの、すっごく大好きです!」


 私がそう言うと、お風呂上がりで火照っていた友璃奈先輩の顔がさらに赤くなっていく。


「……も、もしかして、いま、あたし、けっこう恥ずかしいこと言った?」


 照れて顔を下げつつも、目線だけはかろうじて私の方を向いている。

 真っ赤な顔で上目遣い気味にこちらを見る友璃奈先輩――めちゃくちゃかわいい!

 ただでさえ世界で一番かわいいんだけど、普段のキリッとしたかっこよさや美しさとのギャップが相俟ってというか、思わず抱きしめたくなるかわいさというか、胸がキュンッとなりすぎて心臓が止まりそうというか、もうほんとに尋常じゃなくかわいい!


「うぅ……友璃奈先輩がかわいすぎて、頭がどうにかなりそうですっ」


「はぁ!? きゅ、急になに言ってるのよっ。う、嬉しいけど、余計に照れるようなこと言わないで!」


 動揺した友璃奈先輩がスッと立ち上がる。

 私の眼前に迫るや否や、おもむろに私の頬を左右から引っ張った。


「ふぁ、ふぁにすゆんれふふぁ」


「ご、ごめん、つい体が勝手に……それにしても、蕾のほっぺたってモチみたいに柔らかいわね」


「そうれすふぁ?」


 ぐにーっと引っ張られていた状態からむにむにと感触を確かめるような触り方に変わり、さっきと比べて多少まともに発音できるようになった。


「小顔なのに、ぷにぷにもちもちで……ただ柔らかいだけじゃなく、しっとり滑らかで瑞々しくて……手に吸い付くような……できることなら、一生触っていたいわ」


 ご満悦の友璃奈先輩。

 ちょっと照れ臭いけど、褒めてもらえるのも喜んでもらえるのも、心から嬉しい限りだ。

 触り方も優しくて、マッサージを受けているような心地よささえ感じる。

 むにむに、むにむに。

 キラキラと瞳を輝かせながら、友璃奈先輩は飽きることなく私の頬をかわいがり続けてくれている。

 むにむに、むにむに。

 むにむに、むにむに。

 壁掛け時計にチラッと視線をやり、部屋に戻ってから三十分弱経っているのを確認。

 つまり、友璃奈先輩が私の頬をむにむにし始めてから三十分近く経っているということだ。


「……ゆ、ゆりにゃせんふぁい?」


「……ハッ! わ、悪かったわね、あまりの触り心地に我を忘れていたわ」


 友璃奈先輩はパッと手を離し、慌てて自分のベッドに座り直した。

 思わず声をかけてしまったけど、なんとなく名残惜しいような気もする。もう少し黙っていてもよかったかな。


「えへへ、またいつでも好きな時に触ってくださいねっ」


 私は友璃奈先輩を見つめながら、満面の笑みでそう告げる。

 そしてこの後、二時間ほどむにむにされることとなった。

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