第12話 新たな距離感

 部活後に友達や先輩と少し話してから、へとへとになった体で寮へと帰る。

 たくさん動いて疲れているはずなのに、自分でも驚くほど足取りが軽く、部屋が近付くにつれて歩調が速まっていく。


「ただいま帰りました!」


「ん、おかえり」


 元気よくあいさつしながら部屋に入った私は、ベッドに腰かけている友璃奈先輩のところへと駆け寄った。

 スマホをいじる友璃奈先輩の隣に座り、邪魔をしないように気を付けつつピトッと密着する。


「くっ付きすぎじゃない?」


「いいじゃないですか、恋人同士なんですから!」


「まぁ、それもそうね」


 一度こちらを向いた後、再び視線がスマホへと戻った。

 ダメだと言われなかったのは嬉しいけど、恋人に求める距離感は人によって違うはず。

 誰かとお付き合いするのは生まれて初めてなので、少し配慮が足りていなかったかもしれない。


「もしかして、迷惑でしたか?」


 機嫌を損ねてしまったかもしれないという不安から、自分でもビックリするぐらい弱々しい声が出た。

 友璃奈先輩はスマホを置き、ぎこちない動きでゆっくりと私の方を向く。


「……て、照れてるだけよ。密着してくれるのは素直に嬉しいし、迷惑だなんて微塵も思ってない。……恥ずかしいから、いちいち言わせないで」


 気まずそうに口を尖らせ、顔を真っ赤にしてつぶやく友璃奈先輩。

 か、かわいい……っ!


「友璃奈先輩~っ!」


 凄まじいほどのかわいさを前にして体が言うことを聞かず、本能の赴くままに抱き着いた。

 友璃奈先輩は突然のことに驚きつつも、すぐさま抱き返してくれる。

 その後、自分が部活で汗をかいた後だということを思い出すまで、私は友璃奈先輩をぎゅ~っと抱きしめ続けるのだった。

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