第7話 お風呂で触り合いっこ

 私と友璃奈先輩はいま、寮の大浴場で肩を並べてお風呂に浸かっている。

 チラッと隣を見るだけで、芸術的なまでに美しい体を拝むことができてしまう。

 手足はスラリと長く、お腹周りにも余分な脂肪は見当たらない。

 それなのに、おっぱいは大きい。

 ほんのりと上気した頬が色っぽく、現実離れした美しさに思わずドキッとさせられる。

 最初はチラチラと視線を送っていただけだったのに、気付けばいつの間にか目を逸らせないほどに意識を奪われていた。


「友璃奈先輩、一つお願いしてもいいですか」


「なに?」


 私の言葉に反応して、友璃奈先輩がこちらを向く。

 目線を少し上げて友璃奈先輩と目を合わせ、一拍置いてから言葉を紡ぐ。


「おっぱい、触らせてください」


 至って真剣な態度で、私はそう言い放った。


「なっ、えっ、はぁ!?」


 友璃奈先輩がビクッと体を震わせ、驚きのあまり目を見開く。

 慌てた様子で辺りをキョロキョロ見回し、近くに人がいないのを確認してから私の方に体を向けた。


「べ、別にいいわよ。あたしは初めてだけど、女子校だからこういうスキンシップは別に珍しくないし。赤の他人ならともかく、蕾はそれなりに仲がいい相手だと思ってるし。先輩として、後輩のお願いを聞いてあげるのは別に悪いことじゃないから。だからその……ほ、ほら、触るなら早くしなさいよ」


 未だかつてないほど饒舌になった友璃奈先輩が、手を背中に回して胸を差し出すような姿勢を取る。


「ありがとうございますっ」


 きちんとお礼を言ってから、ゆっくりと手を伸ばす。

 指を目一杯に広げ、正面から鷲掴みにする。

 ふわふわもちもち、しっとりすべすべ。

 す、すごい……っ!

 感動すら覚える極上の感触。私は瞳を輝かせ、夢中になって触り続けた。

 手の位置を下にずらして軽く持ち上げてみたり、指先でぷにぷにと突いてみたり。


「んっ、あっ……つ、蕾、そろそろ、やめてくれるかしら」


「はい、ありがとうございましたっ。すっごく気持ちよかったですっ」


 友璃奈先輩の胸から手を離し、改めてお礼を言う。


「それはよかった。あたしも気――じゃなくて、なんでもないから気にしないで」


 でも、なにか言いかけていたような……。


「ところで、あたしも触らせてもらっていい?」


「わ、私の胸を、ですか?」


「え、ええ、そうだけど」


「そんなこと言われたの初めてですっ。ぜひ、たくさん触ってくださいっ」


 生まれて初めての経験に、高揚感が爆発的に高まる。


「無邪気に喜ばれると、ちょっと心が痛むわね……」


 友璃奈先輩は小声でつぶやきつつ、私の胸にそっと手を当てる。

 手のひらサイズと言えば大嘘になる、ぺったんこな胸。


「蕾の肌、すべすべで気持ちいい……それに、真っ平らだけど、ふにふにして柔らかい……」


「えへへっ、嬉しいですっ」


 自分の胸で喜んでもらえるなんて、夢にも思わなかった。

 あまりの嬉しさに、いままで感じたことのない不思議な感覚が湧き上がってくる。

 お風呂に浸かっていることとは別の要因で、体がポカポカと温かくなっているような気さえする。

 こんな気持ちは初めてなのに、『相手が友璃奈先輩だから』という確信めいた推測が、頭の中に浮かぶ。


***


 お風呂から上がって部屋に戻った後、珍しく友璃奈先輩の方から私の隣に座ってくれた。


「できればだけど、あたし以外に触らせないで」


 一瞬なんのことか分からなかったけど、すぐに胸の話だと気付く。


「はい、分かりましたっ」


『あたし以外』ということは、今後も友璃奈先輩は触ってくれるということだ。

 私が即答でうなずくと、直前までどこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた友璃奈先輩が、柔らかな笑顔を浮かべる。


「もしかして……友璃奈先輩、そんなに私のおっぱいを気に入ってくれたんですか!?」


「ちっ、違っ、いや、違わないけど、その言い方だと語弊を招くというか……」


「やった~! 私のおっぱいは友璃奈先輩だけの物ですから、これからもいっぱい触ってくださいね!」


「ちょっ、それも誰かに聞かれると誤解されるからやめなさい!」


 いつもは冷静沈着な友璃奈先輩の大声が、部屋中に響き渡った。

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