主人公が冬の駅で出会ったのは、「春」を妹にもつ振袖の女性。たおやかな日本語で紡がれる、冬の精とのひと冬の物語。いつもながら透徹した日本語の妙に息を飲まれる、美しい物語でした。
にんげんがくるしむさくひんがすきです
この小説の白眉は『ぼく』が短歌を詠む場面だと思いました。『ぼく』の心情を慮るとなんとも切ない気持ちになります。『ぼく』は『あのひと』の正体が薄々分かっているから、未来でどのような結末が待っている…続きを読む
美しい。実に美しい。『百舌鳥たちて 茅の繁みに わすれぶみ』(発句。脇句はぜひ、本作『彼女は春を俟っている』の中でお楽しみください)この和歌の作者は一体誰でしょう?小野小町でも紀貫之でも…続きを読む
白絹の振袖をまとったひとは「春」を俟っていました。駅のホームで「僕」と「美しいひと」が会話します。その会話の内容も、人物と風景を描写される文章も、端麗な折箱に行儀良く並べられた上等な和菓子のよ…続きを読む
その人はある人を待っていると言います。では、その人は待たれているのか。待たれる存在とは、どういう存在でしょう。本作は、何かを待つということを、色鮮やかでありながら抑制が効いた日本語で織り上げ…続きを読む
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