第1話、私はあんたたちのボスじゃないってば…

「ボス、ボス、起きてください」


「うーん、もう少し寝かせて…」


「何言ってんすか。もう、夜ですよ」


「えっ?誰?」


「誰って、このあたりに住んでたゾンビですよ」


「ゾンビさん…、知らない…、ゾ…」


ジーッ


「ギャーッ、でたー!

というか、くちゃい…」


「仕方ないっしょ。

腐ってんすから」


「ぎゃーっ、くるな!」


「あーあ、もう…

このタオルで鼻ふさいでくださいよ」


「い、いやだ。ゾンビのタオル…、ぼろきれじゃね…」


「やだな、れっきとしたタオルっすよ。

10年前まで」


「いい、自分のタオル使う…」


「おっ、ボスは起きたのか」


ゾロゾロ


「ぎゃー、いっぱいきた!」




「で、あダしは、あんダダちをヅかうヅもりない」


「だめですよ。

一旦起こされたら、死ぬまでボスの子分すから」


「もう、ジんでるじゃない」


「やだな、ゾンビにとって死は、太陽に焼かれた時だけですよ」


「じゃ、やガれろ」


「それが、ゾンビには自殺が許されないんですよ。

ねっ、だから観念してくださいよ」


「ゼめて、においなんドかジろ」


「そういわれてもねぇ、ゾンビって腐ってますからね」


「にグ、おドジてほねになる」


「それって、スケルトン…まてよ、ボス、スキル確認してくださいよ」


「『スキル!』

進化 3/3ってあるゲど」


「やった。コアさえあれば俺らスケルトンに進化できますよ」


「ゴア?」


「そうっす。モンスターの落とす魔石っすよ。

じゃあ、行きましょう」


「どゴえ?」


「やだなぁ、モンスターつったらダンジョンすよ」


「やだ、ゴわい」


「しょうがねえなあ。俺たちが運んであげますから」


「もっドやだ。自分であるグ」




「じゃあ、ボス、ここに魔石をはめてください。

それで、進化っていえばたぶん進化できやすから」


「こ、こう…、ギャー肉フニフニーッ」


「落ち着いてくださいよ」


『し、進化!』


ドロドロドーン


「やりましたよ、スケルトンに進化できました」


「ぎゃーっ、抱き着くな!

川で腐った肉を落としてこい!」



こうして、初日に3体。ゾンビからスケルトンに進化させた。


「おなかすいた…」


「あっ、今、ゾンビたちが肉焼いてますから」


「なんの?」


「イノシシですよ」


「食べる。

あなたたちは?」


「ゾンビは食わねえっすよ。

俺らは、骨をもらうっす」


「骨?」


「ほら、カルシウム補給しないと、骨粗鬆症こつそしょうしょうになっちまいやすから」


「ふーん、大変なんだね」


「ごめんよ。

誤ってるわけじゃないけどゴメンよ」


「はい」


「昨日、死人使いになったお嬢ちゃんかい?」


「たぶん、そうですけど」


「おれっちは、魔王軍スカウトのグンマってんだ。夜露死苦ヨロシク!」


「あっ、こちらこそ」


「そんでさ、お嬢ちゃん魔王軍に来る気ないのか?」


「そういうの、あんまり…」


「そうかい。

まあ、人間の世界じゃ受け入れてもらえねえだろうから、その気になったらこの名刺で呼んでくんな」


「どうやって呼ぶんですか」


「名刺に向かって、グンマと呼び掛けてもらえばすぐ駆けつけるぜい」


「わかりました」


「じゃ、また」ポワン


「き、消えた…」


ドスン!


「いてて、誰だよ、こんなとこに穴掘ったのは!」

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