あなたにキスをした。まだ好きだとも言われていないのに。
中学以来の浩助(こうすけ)と初めてキスをした。まだ彼、彼女という認識さえなくて、「元気を出して」という意味の励ましのキス。なのにそれを父に見られてしまった。彼は父に言われたことが心に刺さり「僕は理性のある人格者になりたい」とか言って、私と逢うことをしばらくやめるといいだした。
でもそれは、振り返ればいつも私がいると思っている、甘えでしかない。
あなたがいなくなれば、私はいつか新しい恋が始まってしまうよ。
大事なものは大事に扱う誠実さを持たなければ、その報いはやってくる。
言葉にだして、その気持ちを私に伝えることを、あなたが電車に間に合う六分前にでも気がつけばいいのだけれど……。
五分前ではどうなるかは分からない。