色々な方が作品のよきところをレビューされていると思います。私がこの作品で注目して読み進めたのが主人公のサラと、そのライバルであるマセコ——。
最初から憎たらしい、可愛げもない我儘娘のマセコちゃん。
詳しいことを書くとネタバレになるのでここに上げることはできませんが、ともかくこのマセコの魅力に終始やられてしまいました。
女子の友情って複雑怪奇。友達であり、ライバルであり、心の友。
そんな複雑な女子同士の友情をリアルに表現しているところがこの作品の魅力の一つだと私は思っています。
アメリッシュさんの作品の魅力のもう一つは、主人公も然りですが、その周囲のキャラクターの生き生きと動く姿——。
ヒロインやヒーローではない、泥臭い、人間らしいキャラクターたちに注目して読んでもらいたい。きっとお気に入りの一人が見つかることでしょう。
昨年の10月、カクヨムで小説を書き始めて半年も経っていないアメリッシュさんが、「カクコンに10万字のダークファンタジーで参加する!」と宣言された時、正直言って「なんと無謀な…」と思ってしまいました。しかし彼女は2か月でプロットを完成して、12月1日から1月17日まで1日もかかさずに更新し、ついに完結!!
その努力に「完結、おめでとう!」と、心から言わせてください。更新の日々、読者の私も、アメリッシュさんの頑張りと物語りの内容に、ワクワクドキドキしながら元気をもらいました。
物語りは、現代の日本で育った気弱な女子が、18歳の誕生日前に生まれ故郷の異世界に連れ戻され、そこで、<炎の巫女>として覚醒していくさまが、丁寧な異世界での生活描写や淡い恋心を挟んで描かれています。
特に最後のドラゴンとの対決シーンの筆さばきは圧巻です。
もう1度、通しでじっくりと読みたい作品です。
――ここではない、どこかの世界で。その少女は、ドラゴンへと捧げられる贄(にえ)であった。
その少女はやがて成長し、自らを贄とした世界を破滅へと導く――ドラゴンの巫女として。
場面は一転して、現実世界で育った少女、沙薇(サラ)。成長するとともに、現実世界との、心身ともにズレを感じていく彼女。
その彼女の前に現れた――美貌の彼、レヴァル。
エルフの血を引く美貌の青年、レヴァルに導かれ、沙薇は異世界へ。
その異世界は、かつて、ドラゴンの巫女によって、破滅の淵へと追いやられていた。
沙薇は、サラは、レヴァルの導きにより、ドラゴンの巫女となり、その世界を救えるのか?
そしてサラは、レヴァルの宿命の女として、彼を救えるのか?
これは――ひとりの女の子が、宿命(ファタール)に挑み、女(ファム)へとなる、愛と成長の物語です。
幼少の頃の記憶がなく、個性的な母親と共に日本で暮らしている少女沙薇。そんな彼女には大きな秘密が。
本人は知りませんが実は沙薇は別の世界から日本にわたってきた、異世界人なのです。
しかも沙薇の一族、元いた世界では大きな力を持っていて。同時に過去に大きな悲劇をもたらしたとして、多くの人から敵意を向けられている、訳ありの一族でした。
出来ることなら平和な日本でひっそりと暮らしていきたかった。しかし、運命は容赦なく彼女に襲いかかります。
人間の恐ろしい、醜い部分が描かれながらも、読む手が止まらないダークファンタジー。
過酷な運命はに挫けそうになるも、自らのすべきことを探していく沙薇から、目が離せません。
8歳までの記憶がなく、どこか情緒不安定だった少女、沙薇。そんな彼女が成長した時、異世界から一人の使者(イケメン)がやって来ました。
彼が言うには、沙薇は元々その世界の人間で、しかも特別な存在。そして自分は、そんな沙薇を迎えに来たと。
ここまで書くと、あとはその異世界に行き、そこで素晴らしい出来事が待っていると想像するかもしれません。しかしそれは、半分当たりで、半分外れ。やって来た異世界。いえ沙薇本来の世界で待っていたのは、自分がドラゴンの選らばれし巫女であるという事実。そしてその生まれ故に、多くの人から恐怖と憎悪を向けられているという、過酷な現実でした。
かなりハードな世界観で展開される異世界もの。ですかそれだけに、主人公沙薇の抱く感情や変わっていく姿に説得力があり、読んでいて力強さを感じます。
そして個人的に注目したのが、沙薇の幼馴染みのマセコ。とはいっても、最初から好きだった訳ではなく、むしろちょっと苦手なキャラかと思っていました。なのに話が進むにつれ、次第に彼女の存在が必要だと思っていくことに。
主人公やそのパートナーが魅力的なのはもちろんですが、サブキャラが良いというのは一つの良作の証です。
これはファンタジーだが、同時に、人間の複雑さを突きつけてくる。
それは別に世界を越えなくても有り得ることなのだ。
ある時には弱虫な人間が、場所を変えると別人のように自信に満ち溢れて。
ある時には媚びを売り姑息な手段をとる人間が、ある時を境に謙虚な姿を見せる。
しかし、本質が変わった訳では無い。
人の別側面を見た時、ある時は裏切られたと思い、ある時は偽善だと吐き捨てたくなる時もあるだろう。
けれど多分、私たちは、全ての姿を見つめられるほど、俯瞰的には観られないのだ。
それすら飲み込み、信頼を築けるか。
……で、もう、作者としても読者としても人間としても試されてるような物語に、いっそ読むのを辞めたくなるほど、これでもか、これでもかって叩きつけられたんだけどさ。
スピンオフがこれってどーよ、アメさんやいwwww
その日も普通の朝を迎えた。行きつけのコーヒーチェーン店で、とある老女が意味深な呟きをするまでは。
現代の日本で暮らす大学生・沙薇の元に現れたのは、美しきエルフのような男。
得体のしれない男との出会いに舞い上がるほど、沙薇の思考はお花畑ではありませんでした。私が沙薇と同じ立場でも、恐怖のあまり腰を抜かしてしまう状況です。序盤から登場人物に共感できる心理描写が多いので、世界観にすぐ惹き込まれました。
謎の男が誘うのは、沙薇にとって幻想的で懐かしい場所。そして、現代日本の常識が通用しない異世界でした。沙薇が背負った宿命の行方を見届けてください。