異界に描くは、想い込めた真のカタチ

己が何者なのか、記憶も過去も、自身の姿すらも失った少女が不思議な異界にて『写見』という名を与えられ、『絵巻屋』と『化身』なる二人のお兄さんと様々な事件と向き合い、『自分』を取り戻し、さらにその先へと進んでいく――そんな成長と優しさの物語です。

優しいと書きましたが、写見に隠された秘密はあまりに残酷で、目を覆いたくなるほどの悲しみと辛さに満ちています。

だからこそ、優しさが痛いくらいに身と心にしみるのです。

写見は与えられた名の通り、しっかりと目を開けて立ち向かい、時に届かない不安に躊躇いながらも手を伸ばし、全てを認めて受け入れ、そして大きな決断をします。

三人にずっと一緒にいてほしい。幸せに暮らしてほしい。
そう強く願いながらも、途中で仕方ない、こうなるしかないんだと諦めかけましたが、そんな私を写見は勇気付け、物語の最後まで小さくも強い手で引いて導いてくれました。

ラストの大団円には、皆にも是非触れていただきたい!

苦しいことがあっても前を向いていよう、目を逸らさず見つめて立ち向かっていこう、そんな勇気をひとしずく分けていただけるお話です。

あー!
自分の隣にも化身がいてくれたらいいのになあ!!

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