カタチ写してモノと見る 〜異界絵巻屋定義エンギ

作者 黄鱗きいろ(灰の街の食道楽書籍化!)

111

37人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

異界に迷いこんだ少女の視点で語られる不思議な世界。
身元を引き受けた絵巻屋と化身によって、少女は『写見』という名前を与えられ、悲喜こもごもの様々な騒動に向き合っていくことになります。
そして随所にちらつく不穏な気配…。

全ての謎が集約する終盤で登場人物たちが背負ったものが明かされていきますが、特に写見の負う秘密は残酷で非常に辛いもので、読んでいて心が苦しくなりました。
けれど、彼女が葛藤の末に選び取った決断によって、読者は絶望の底から光が射す結末へと掬い上げられます。

本当にみんな不器用(特に絵巻屋)で、あたたかくて…抱き締めたくなりますね!
最終章はずっと泣いていました。
このモノガタリをハッピーエンドにして下さってありがとうございます!
読んで良かったです。

個人的な推しは化身です。ふよふよ。

★★★ Excellent!!!

「異界」という不可思議な世界観の中で繰り広げられる物語と、言葉の端から、仕草から醸し出されるキャラクターの個性が輝る作品だと感じました。

一つ一つの物語がしっかりとしたドラマになっていて、主人公が不器用に、それでも懸命に成長していく姿が強く印象付けられます。そして、時おり顔を出す切なさも、静かな余韻を残していたように思います。

個人的にとても楽しめました。次の話、次の話、というワクワク感もありましたし、テンポが良くて読みやすかったことも高評価の理由です。時に「おいおい」と突っ込みながら、時に「うんうん」とうなずきながら、楽しめました。次回の作品も楽しみにしてます。

★★★ Excellent!!!

己が何者なのか、記憶も過去も、自身の姿すらも失った少女が不思議な異界にて『写見』という名を与えられ、『絵巻屋』と『化身』なる二人のお兄さんと様々な事件と向き合い、『自分』を取り戻し、さらにその先へと進んでいく――そんな成長と優しさの物語です。

優しいと書きましたが、写見に隠された秘密はあまりに残酷で、目を覆いたくなるほどの悲しみと辛さに満ちています。

だからこそ、優しさが痛いくらいに身と心にしみるのです。

写見は与えられた名の通り、しっかりと目を開けて立ち向かい、時に届かない不安に躊躇いながらも手を伸ばし、全てを認めて受け入れ、そして大きな決断をします。

三人にずっと一緒にいてほしい。幸せに暮らしてほしい。
そう強く願いながらも、途中で仕方ない、こうなるしかないんだと諦めかけましたが、そんな私を写見は勇気付け、物語の最後まで小さくも強い手で引いて導いてくれました。

ラストの大団円には、皆にも是非触れていただきたい!

苦しいことがあっても前を向いていよう、目を逸らさず見つめて立ち向かっていこう、そんな勇気をひとしずく分けていただけるお話です。

あー!
自分の隣にも化身がいてくれたらいいのになあ!!

★★★ Excellent!!!

写見はなぜこの異界にやってきたのか。絵巻屋の過去に何があったのか。化身はどうして、物事主はどうして、道行はどうして……さまざまな疑問がエンジンとなってスクロールをせかす。更新が待ちどおしかった。クライマックスからは涙が止まらなかった。愛し過ぎた。哀しすぎた。あげくの、嬉し過ぎる大団円。悔しいが、著者の思う壺で踊らされた年末年始になった。

後になって落ち着いて考察してみると、どの登場人物も愛おしい。
言っておくが『みんな良い人』で気持ち悪い、とは違う。
どいつもこいつも可愛いのだ。ダメなとこ、めっちゃあるけど。

新年早々、いい作品に出会えた。
幸先が良い。
著者殿に礼を言いたい。
楽しませてくれてありがとう。

★★★ Excellent!!!


「自己もまた、このような他者もしくは世界なしには決して存在せず、これらからの抵抗を受けながら存在する」
 自分という存在は他者からの存在無くては在り得ないのだ。
 と、少々堅苦しい前置きからレビューさせていただきます。
 一話から最終話まで読む中で、頭の中にあったのはディルタイのこの言葉でした。

 主人公は自分を忘れた女の子。
 かたちも名前もない彼女はともすればいないものでした。
 ですが『絵巻屋』と『化身』に出会い、自分という存在を地につけた瞬間、この物語の主人公の長くて短い自分探しが始まります。
 街の人に暖かく見守られ、認められ、けして彼女に起こることはいいことばかりではないけど必ず誰かがそばにいてくれるという安心。

 そして、自分という存在を認めるために向かい合わなければならない過去。
 彼女の過去になにが起きたのか。
 それに向き合えるのか。
 後半に進むにつれ、主人公たちも読者も重い足取りで歩いていく錯覚を覚えます。
 だけど一人ぼっちではありません。
 きっと、その先には……。

 自分という存在は他者からの存在無くては在り得ない。
 彼女と彼らは、己と、他者と、どう認めるのか。
 そうして最後に。
 彼女たちの未来はぜひあなたに見届けてほしいのです。


 ます!