これを読まないと夏は終わらない

すんごい。ひと言で言うとこれ。今年のカクヨム甲子園を語るならこの物語に目を通しておかなきゃダメ、まである。『夏を殺す』という、不条理ものとさえ思える文言が、不気味さを引きずりつつこちらの興味を強く引きつけていて、飽きることなく一気に読める。この題材って、普通に描けばふわふわと曖昧にゴールにたどり着いてしまい、なんだかわからない物語になりがちだと思うのだけど、作者さんの筆が乗り過ぎていて、また、『よくわからなかったもの』を『ちゃんと納得できるもの』として共感させる展開運びが巧み過ぎて、読んでいる最中とにかく「すっげえ」「すっげえ」と頭の中でずっと言っていました。部屋に散乱する夏の残骸を描いた部分がとりわけ好き。この人へ向けては二の次の賛辞になってしまうけども、蛇足ですが、文章も頭抜けている。

推します。

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