なにかのきっかけでここに目が留まった人は、読んで欲しい

 私に変化をもたらしてくれたカクヨム創作論です。

 カクヨムランキング上位の作品ってどんなのか知っていますか? 長いタイトルの異世界転生ものかラブコメ作品が席を埋めているアレです。カクヨムトップページを見れば一目瞭然。

 山下さんの創作論は「なぜ人気作品は人気作品たり得るのか」を分析したもの。こういうのって結構多くの人が書いていると思いますが、山下さんの創作論が秀逸なのは、

 ①実際に★500の小説を書いた人だから説得力がある
 ②たとえがわかりやすい
 ③結論が具体的

以上の理由から。

 まず言っておきますが、カクヨムの書き手さんなら読んでおいたほうがいいです。最終的に身にならなかったとしても、全部でたった二十分ほどです(2021年6月現在、五話くらい投稿済み)。とりあえず読んでみてください。
 なぜならそこに書いてあるのは『昨今流行りの長文タイトル小説』だけに留まらない、ネット小説全体の戦い方です。

 小説は中身がなによりも大事。

 それは誰だってわかっていますね? それでいてランキング上位にいるのがどれも同じようなタイトル、同じようなジャンルのものばかりなのはどうしてでしょう? 単にカクヨムの読者層の問題か?
 山下さんの説明を聞いてなるほどと思いました。
 それがすべてではないでしょうが、ほとんどなんだろうなと思いました。

 自分が読んで欲しいターゲット(読者層)に向けて、理由のある正しい営業ができているか?

 ターゲットを特定の分野のマニアに設定するなら、そこに訴えかけるワードがあるでしょう。それでも一定の効果は発揮しますが、PVやブクマというかたちで顕著には現れません。なぜならターゲットが狭すぎるから。そもそも受け入れてくれる潜在読者が少ないからです。
 ちゃんとタイトルもキャッチコピーもこだわったのに、渾身の作品が書けたのにPVが取れない。実はそれは失敗でもなんでもなく、ただの正しい結果だったという。いやー、メカラウロコですよね。

 PVを取るということは潜在読者が多いところに訴えること。それは藤子・F・不二雄がダークな短編集じゃなく、ドラえもんを描くということです。

 もちろん『なんの変哲もないタイトル』で★100越えを連発してらっしゃる作者さんもいます。でもきっとそんな書き手さんでさえ、ある程度のファンがつくまでは厳しいはず。多くの人はまず中身を読んですらもらえないから。

 かつて大ヒットを飛ばした『けものフレンズ』だって、冒頭だけ見れば、若干輪郭が崩れた3Dモデルの少女が草原を走っているだけの画です。その先を見て貰えればおもしろさに気づくのに、あの珍妙なキャラと、そしてタイトルがけものフレンズ。「なんだこりゃ?」って普通なりますよね。実際私あの冒頭だけ見てチャンネル変えましたからね 笑 (その後反省して全話見返しました)

 それくらいタイトルとキャッチコピーの役割ってでかいんです。そこにはネット小説における理由ある戦い方がちゃんと存在して、実践しようがすまいが書き手の自由だけども、知っているのといないのとじゃ雲泥の差が生まれるわけです。

 物語をじっくり読んでみれば、★の数とおもしろさが比例しないことに気づきます。★を取る(PVやブクマを取ると同義)ことは、書き手が考えるほどには重要ではありません。ネット小説でウケるのと文学賞を取ってデビューするのは別の問題で、さらに言えば本になった物語が必ず最低限のエンタメ性を備えているかはけっこう疑問です。読者の立場で言えば。

 ですから、自分の戦う場所を知っておくことがまず大切なんでしょうね。
 それでもし、カクヨムでPVを取りたいなら――カクヨムというかネット小説で多くの人に読まれたいならば、山下さんの示してくれた戦い方はとても役に立ちそう。

 推します。

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