私と溝口君

作者 吉野奈津希(えのき)

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★★★ Excellent!!!

"私"と溝口君はいつだって一期一会だ。日々投稿される一話完結の掌編たちは、お互いに一切の繋がりもなく独立していて、死に戻るわけでもなく、エンドレスエイトを繰り返すでもなく、平行世界のifはEXCELの『溝口君』ソートでただ整然と並んでいる。
一貫しているのは、溝口君は大切な存在なのだという"私"の意思だけ。世界を変え、立場を変え、時代を変えて、溝口君は否定され続けた。掌編によっていろんな色を持っていた彼は私たち読者の記憶に一話一話と降り積もっていき、24色カラーの絵の具を全部混ぜた結果できてしまった泥色のような悲しさを見せてくれる。
悲しみを内包した世界は、現在私たちの目の前にあると思う。いつも最後には散ってしまう溝口君がその命を持って示す淡々とした優しさが、今の時代を生きている私に様々なことを示唆してくれた。

読んでいればきっとあなたなりの「いいなあ」が見つかるはず。
構成的にも他に類を見ないオリジナリティがすばらしい。

推します。


追記『三か四角によるオススメ溝口君のコーナー★』

◆辻褄合わせ
https://kakuyomu.jp/works/1177354055501294855/episodes/16816452218509832969
【解説】『私は八面六臂の活躍を見せる』の一文がたまらなくすき。溝口君を肯定する自分を全力で信じる"私"が暴れ回る。まるで舞城王太郎。

◆レイニーハミング
https://kakuyomu.jp/works/1177354055501294855/episodes/16816452218401707946
【解説】『私は溝口君の何かを隠すように地面に降り注ぐ』雨の中にしか表出できない"私"の世界を溝口君がやさしく包み込む。

◆それは私のための繋がりなのに
https://kakuyomu.jp/works/11773… 続きを読む