まず、きれいな★777を崩してしまってごめんなさい。私がレビューすることでこの並びのいい数から★780になってしまったのですけど、第26話あたりを読んでからなんというか呆然としてしまい、続きを読むことでこの物語の中から出ていきたくないという感傷を引きずったままどこにも行けないので、言葉にさせてください。
『読み終わった後もずっとこの物語の中にいたいと思った』というのは恋愛小説のベストセラーである『君に恋をするなんて、ありえないはずだった』のオビの文章なんですが、まさにそれです。どころか、続きを読んで終わらせたくない。似たような経験なんてまるでしたことがないのに、強烈に共感して世界に没入してしまう―――これって、ちょっとやばいことだと思う。きっかけはやはり『ちくっとした痛み』なんですよね。人生は一度きりで、"失敗"は未来の糧にはなるけれど取り戻すことはできない。加えて、あの時ああしなかったら今頃は……っていう想像力もあいまって、作中で受け取った痛みはずっと、小さな棘として胸の奥に刺さったまま残り続けて、フィクションの中の出来事にもかかわらず、まるで実体験のように共感してしまう。これを書いている今、まだ身体の奥がしびれています。"痛み"を表現するのがとってもうまい。おかげで忘れられない物語になりました(まだ半分程しか読んでいないのに……笑)。書籍買います。続きは……数日経って気持ちを落ち着かせてから読みます。だって書籍があれば何回も読めるし。そうなりゃ物語はもう私のもの。最後に、失礼ながら身も蓋もない感想を。此見えこやべえ。小さな痛みをありがとうございました。
推します。
人間は感情と欲望の生き物だ。
醜いところも、汚いところもあって、でも、だからこそ愛おしい。
そう思わせてくれる傑作だった。
この作品は高校生の男女――主人公の幹太とその幼馴染の七海、幼馴染が恋に落ちてしまう卓、主人公のことを好きになる季帆、この4名の関わり合いを主軸に展開される。
ラブコメ、ではない。終始シリアスな恋愛ものであり、青春ものでもある。
と同時に、七海がなぜ幹太をさしおいて他の男性と付き合うことになったのか、なぜ柚島に行きたがったのか、また季帆がなぜ幹太にあれほど献身的に(自己犠牲的に)ふるまうのか、張り巡らされた謎が物語を駆動し、それらが少しずつ明かされる様はさながらミステリのようでもある。
一話読み進めるたびに、読み手はああでもない、こうでもないと想像を巡らせる。
それが合っていたとしても、間違っていたとしても、思い悩んだひとときは至福の時間だ。
そして最後まで読み終わったとき、すべての謎が明かされたとき、待っているのは怒涛のように押し寄せるカタルシス。
すべてのピースがぴたりとはまり、きれいな一枚絵になる、ジグソーパズルの完成に似ている。
もちろん、ただ話の筋がいいというだけではない。
まず、文章がべらぼうに上手い。
掛け合いばかりが続くような文章ではない。
情景描写、心理描写にも余念がない。
だが、表現過多に陥ることなく、適度に省略を入れて余韻を感じさせつつ、読み手の読解力に委ねる。
その結果、地の文と台詞のバランスが絶妙で、さらりと読める。
テンポがいい、とひとことで言うのは簡単だ。
しかし、その陰には並々ならぬ推敲の努力があるはずだ。
もしそうでないとしたらそれは、天賦の才、としか言いようがない。
そんなことさえ感じさせる筆致だ。
お話のボリューム感もいい。
話が途中で脱線することもなく、物語の本筋を最後まで過不足なく書ききっている。
本編だけでちょうど単行本1冊分くらいだろうか。
このくらいのボリュームで物語を起承転結させられる書き手は、腕がいいと思っている。
各話のタイトルはシンプルでそっけないように見えて、なかなか意味深で、そこもセンスが光るように感じられた。
表題をオチにもってくる手法はありがちではあるけど、私は好きなやり方だ。
最初から最後まで、きちんと筋が通っているような気がするからだろう。
好き嫌いはあるかもしれない。
でも恋愛ものが好きで、ヒリヒリするようなお話が好きで、作者のストーリーテリングの妙に酔いしれる作品が好きなら、太鼓判を押します。
本当に完成度の高い作品です。
ぜひ読んでみてください。
受験が終わったので一気読みしてしまいました。
えこ様の作品は初めて読んだのですが、読むのが少し辛くて、でもそれ以上におもしろくて。
幼馴染として何年も寄り添ってきた主人公とその幼馴染の思いの差がとても寂しく、ここまでおさまけ(?)だと思えるのも珍しいなと(笑)
登場人物がみんな何かズレていて、私としては最初少し怖いという印象も持ち、もっとドロドロした話になるのかとも思いましたが、とても綺麗で、個人的には最後の少し心に引っかかる感じも心地良くて、
ただ甘々な話になるわけでなく、色々乗り越えて色々なことに気づいて人として成長していくところがとても好きだなと感じました。
コメント欄の考察なども含めてとても楽しい時間を過ごせました。