概要
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!夏殺しの少年もまた、夏の象徴の一つ
星新一の『暑さ』という短編を思い出しました。かいつまんで書くと、毎年夏の暑さへの苛立ちをなんとかして解消しようとする男の話──それは〝生き物を殺す〟ことなのですが、こちらの短編でも、語り部の少年は同じように夏に煩わされ、更にはその苛立ちを解消するために殺そうとします。ただしそれは生き物ではない。夏という概念。大人からしたら一種の誇大妄想とでも呼ぶべき犯行動機は、繊細で危うい思春期の少年にとってはこれ以上ないくらいにリアルな問題であり、それだけに不明瞭にならざるを得ない言葉が暑い部屋の中でこもっていくような描写が、語り部の少年の心中を兎角やるせないものとして、読者の心に余韻を残します。少なくと…続きを読む
- ★★★ Excellent!!!遅効性の面白さ
この作品を読み、☆3をつけたのは数日前だったような気がしますが、その後、身体のどこかしらにずっとこの作品と「夏を殺す」という言葉が引っかかっていて、いてもたってもいられなく、レビューを書きに再度参りました。
まず構成力の高さもそうですが、なにより一つ一つの言葉のパワーに衝撃を受けました。人生ただ生きてるだけじゃ思いつくことのないような珍ワードの数々。しかし、それらの言葉のもつ違和感を使いこなし、そして、その言葉たちが全て歯車として噛み合って動くことで、この作品が強烈なインパクトを持っています。違和感を反芻するたびにそれらがまた深みを増していくようで、何度読んでも飽きというものがさっぱりき…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これを読まないと夏は終わらない
すんごい。ひと言で言うとこれ。今年のカクヨム甲子園を語るならこの物語に目を通しておかなきゃダメ、まである。『夏を殺す』という、不条理ものとさえ思える文言が、不気味さを引きずりつつこちらの興味を強く引きつけていて、飽きることなく一気に読める。この題材って、普通に描けばふわふわと曖昧にゴールにたどり着いてしまい、なんだかわからない物語になりがちだと思うのだけど、作者さんの筆が乗り過ぎていて、また、『よくわからなかったもの』を『ちゃんと納得できるもの』として共感させる展開運びが巧み過ぎて、読んでいる最中とにかく「すっげえ」「すっげえ」と頭の中でずっと言っていました。部屋に散乱する夏の残骸を描いた部…続きを読む