新型ウイルスが猛威を振るう今。
共に顔を寄せ、好きなだけ喋り、飲み、笑い——大切な人たちと紡ぐはずだった愛おしい時間が、あのウイルスによって残酷に奪われていく。そう思うことがあります。
けれど——人間から幸せを奪うのは、必ずしもウイルスだけではなく。
ウイルス蔓延の有無に関わらず、人間たちの間には残酷な不幸が無数に、そして絶え間なく潜んでいる。
ともすれば私達を押し潰しそうになる闇の合間に、人々は命懸けで求め合い、愛し合う。
結局人間は、どうやっても苦しみを免れない生き物なのかもしれない。
そんなことを改めて思わせる、強い苦みを纏った物語です。