遅効性の面白さ

 この作品を読み、☆3をつけたのは数日前だったような気がしますが、その後、身体のどこかしらにずっとこの作品と「夏を殺す」という言葉が引っかかっていて、いてもたってもいられなく、レビューを書きに再度参りました。
 まず構成力の高さもそうですが、なにより一つ一つの言葉のパワーに衝撃を受けました。人生ただ生きてるだけじゃ思いつくことのないような珍ワードの数々。しかし、それらの言葉のもつ違和感を使いこなし、そして、その言葉たちが全て歯車として噛み合って動くことで、この作品が強烈なインパクトを持っています。違和感を反芻するたびにそれらがまた深みを増していくようで、何度読んでも飽きというものがさっぱりきません。
 次に、主人公について。いや本当に狂っている。本文では一度も「自分は狂っている」なんて書かれていませんが、それでも100人読めば100人が主人公のことを「狂っている」とわかる狂気、それを様々な要素を通じて間接的かつ整然と伝える上斗春さんの文章力も良い意味で狂っています。
 4000字以内という字数制限があるにもかかわらず、とにかく濃く、素晴らしい作品になっていると思います。

 噛めば噛むほど味が、面白味がどっと押し寄せてくる感覚を、みなさんにも是非体感して欲しいです。