なんか……とんでもないモノ読んじゃったなぁ……って感想です。率直に。
何をどう言えば良いのか分からなくなるタイプの作品でした。どう言っても魅力はきっと伝わりきらない。感想を付ける側としては敗北感があります。もう頼むからレビュー読む前に全部読んでくれ。
レビュー機能は「ここが面白いよ」とか「ここが凄いよ」とオススメするためにあるのですが、あえてハッキリ言うなら序盤で合わなかった人には一切オススメしません。しかしこの言葉が逆に、何よりも『冒頭で惹き込まれた人なら絶対満足する』という意味合いを持つオススメレビューになると信じています。
残虐で残酷であり、凄惨であり暴力的で、尊厳も命もゴミみたいに踏みにじられる物語です。作者さんの文章力が高いせいで、暴行シーンとか流血シーンが本当に痛々しい。しかしそれが単なるリョナだとか露悪的な要素ではなく、ちゃんと作品としての面白さや魅力、芸術性として昇華されているのはお見事の一言でした。自分だったら絶対に書けないです。
『オリジナリティのある世界観』だとか『よく練られた設定』とか『個性的なキャラ達』といった言葉すらも、言おうとしたら軽く感じるほどに重厚であり、創作物でありながら『理不尽な現実(リアル)』を、読者の胸が締め付けられるほど突き付けてきます。
しかしただ単にグロくて暗いお話なのかというと、そういわけでもありません。むしろこれほど過酷な物語であるからこそ、母娘の『愛情』や、『命』や『生きる』ということの素晴らしさが際立っている作品なのだと思いました。こういう世界を描いたために、真の『信頼』や『優しさ』や『自由意志』が表現されているように感じました。
あえて惜しい点を挙げるとするのなら、冒頭や序盤のインパクトが強烈すぎるせいで、中盤以降も面白いのに減速したように錯覚したり、パワー負けしている印象を抱いてしまう点でしょうか。一話みたいな展開をポンポンお出しされても、それはそれで読者のハートがブレイクされますが……。
しかし最初で心を鷲掴みにされたのなら、もう目が離せません。暗くて怖くて痛くてグロいのに。最新話まで一気に読んでしまうほどのパワーを秘めています。
そして紫蘭と紫は『幸せ』を掴み取ることができるのか。最後の最後まで見届けたくなります。早くラストまで読ませてくれ。毎秒更新してくれ。そう願うほどの作品でした。
血と肉と吐瀉物を彩る巧みな言葉。そして、血と肉と吐瀉物とで『死』を彩る物語。作者様の性癖全部のせ凄惨マシマシ「死」の次郎系ラーメン小説がキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
はいどーもー!
スーダラでーす!
軽い感じでやってまぁーす!
その場のノリで生きてる生き物でーす!
責任も重い立場もノーセンキューでーす!
うぇいうぇーい♪
いやー、後先考えずにやっちゃうよネッ♪
え?
やっちゃわない?
嘘だっ!!(竜宮レナで)
やっちゃうよアナタもー!
たとえば、ホラ。
アレ!
生まれて初めて次郎系ラーメン食べたときもそうだった。なぁーんも調べず、ただ皆が行列してたから並んで入って。
で、周りの人が「マシマシ」とか「追加で」とか言ってるの聴いて、通ってる感出したくて、同じように「マシマシ」注文して。
で。
出てきたエベレストに絶句! ……っていうね。
次郎系あるあるですよ。
ホントねぇ、いい歳なんだから、色々考えなさいよ、スマホもあるんだから、先に調べなさいってハナシですよ。
あるでしょ?
そういうの。
え?
ない?
マジか……。
みんな……用心深く生きてるんだなぁ……。
ま、まぁ!
もー、ホント!
スーダラみたいにね、ノリと雰囲気でやってちゃダメですよねッ!
特に、やれもしねーくせに「やる!」とか言っちゃホントにダメだもんね?
このスーダラレビューなんて、企画そのものが最たるものだもの人間だものコジカだけどぉっ!
もぅ、自分で吐いたツバ飲まんがために必死www
スーダラみたいに大変なことにならないように、スーダラの死に様をじっくり観察して、その死体を踏み越えて、同じ轍を踏まないようにイクんだよ! って、皆は用心深いから大丈夫か!
さ!
レビュー後半戦も終わりに近づいてきて、急に自分の軽薄さを振り返って反省しちゃったスーダラさんですが、それはともかく作品のハナシをして参りましょう!
スーダラレビュー12本目はコチラ!
メイルストロムさんの作品
「Save Us From Dream」
でございま、スッ……!
ハレッ⁉
「軽いノリ」の霊圧が……消えた⁉
はい。
軽いノリが消えてね。
代わりに、重さ、がね、やってまいりました。
(軽いノリで食べた次郎ラーメンの後の、あの信じられないくらいの胃の重さのごとき、グッ! とくる感じの)
でね。
ココからはね。
スーダラ、ようじになるの。
ちょつとね、こんかいのれびゅーはね、ここからね、ようじのスーダラでないと、キッツイな、とおもうのね。
なんでかっていうとね、あのね、このおハナシがね、たーいへんだからなの。
ゆめのくに、の、おハナシ。
どりーむ、らんど。
……むかーし、ならけんに、そのおなまえの、ゆうえんち、あったね。
まぁ、メイルストロムさんのは……ち、と、ぞうもつ、げろりんちょ、の、どりーむ、らんどなんだけどね。
あのね。
キラキラしたのがね、いっぱいなの。
いっぱい、いぃーっぱい、なのっ!
キラキラ、キラキラ……。
キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ……………………KILLER,KILLER.
あのね。
『し』がね、みぢかなの。
とってもとぉっても、とぉーっても『し』が、みぢかなの。
すっごく!
『ほっふほふー♪ で、コロッコロ♡』なの。
え?
うん、だから……
『屠る屠る♪ で、殺す殺す♡』なのよ。
(ちなみに「ほふほふ」は©クール教信者先生の『さび抜き彼女』より)
ほふほふ♪
コロコロ♡
しゅっっっごぉおいのぉおおおおおおーっ!!
『し』がみぢかすぎて、『殺す』を『コロッ♡』に、のうないへんかん、しながらよまないと、みがもたないの。
……だから。
スーダラね、ようじかしないと、こんかいのレビュー、こころがもたないかなぁーって。
えっとね。
でもね。
コーンフロスト……じゃない。
あ、ケロッグチョコワ!
でもないや。
ええと、なんだっけ?
あ、そうだ!
シリアル!
そう、シリアルのことが、だーいすきな、シリアルキラー!
とかじゃ、ないのよ?
うん。
ないの。
ズコーッ_(┐「ε:)_!!
もちろん、サイコパス、でもないのよ?
うん、ちがうの。
そういう、いじょうしゃのおこす、はんざいによる『し』じゃなくて、さくひんせかいのね、そのきちょうをなすために、たいりょうの『し』が、たてものの、きそ、のように、すえられているの。
それでね。
そのきそのうえに、うわものとして、ちと、ぞうもつと、としゃぶつで、そうしょくをほどこした『し』のやかたがね、けんせつされているの。
こったつくりの、でも、どこか、むきぶつてきな、そんな『し』のやかた。
そりっどで、えっじがきいてるのよ!
そして、いりぐちはあっても、でぐちはない、の。
そのおくへと、まよいこんだら、でてこれなくなる……。
まさに、ナラカ。
さんすくりっとごの、ならく、の、い。
これねぇ。
このおハナシをねぇ。
スーダラ、おもうの!
このおハナシをね、できれば、『ちぃかわ』のえがらで、こみからいずちてほちい!
もしくは『おるちゅばんエビちゅ』とか!
なんなら、サザエさんの、はせがわまちこちぇんちぇい、でもいいや!
とにかく、そぉいう、にちじょうけいの、ホッコリするえがらで、えがいてみてほちい。
バトルのびょうしゃも、とつても、ていねいだから、うごきが、よぉくつたわる、ぶんしょう。
ぜったい、そのギャップに、マンガかのちぇんちぇいが、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! ってなって、オモシロイだろうから。
あ。
まちがっても、まなべしょうへいちぇんちぇいや、させぼたろうちぇんちぇい、の、えがらは、ダメ! ゼッタイ!
とらうまになっちゃう!
ってなカンジで、なんとか、じぶんのこころをまもりきったところで、げんばからのれびゅーは、いじょうです!
そんでもって、いまさらだけど、この、ひらがな・カタカナだけで、ぶんしょうかく、って、ちょつとよみにくいけど、しょきのドラクエみたいで、おんもちろいよね!
あーうん。
このさくひんね、スーダラみたいなメンタルのヨワイヒトは、のうないへんかんしながらよまないとわぁああああっ!! ってなるけど、こころのつよいひと、メイルストロムさんと、セイヘキをおなじくするひと、もしくは、あえて、あえてこころをいためつけたいひとは、へんかんせずに、そのこまやかなぶんしょうでいろどられた『し』をうけとれるから、よんだほうがいいよみんな!
じゃあの♪
バッファファーイにゅーん♪
大崩落と呼ばれる大厄災の後、地球には魔物が跋扈し始めた。その魔物に対抗する為に人類は亜人種という生物を作り、その者達に魔物の掃討を命じた。
主人公は紫蘭という亜人種の女性。彼女は村でたった一人の娘と共に生きてきた。だが、魔物は容赦なく村を襲撃し、紫蘭の日常を壊してしまう──
バトルがメインのダークファンタジーですが、その戦闘シーンはまさに命がけの戦い。時には女子供にも容赦なく、戦いという残酷な現実がふりかかります。グロテスクな表現もある為、苦手な方もいるかもしれませんが、ある意味で戦いの残酷さをリアルに書ききっているとも言えます。
苦しい現実の中に見える一筋の光明は娘の存在。ですが、その娘も死の危機に直面したり、拐われたりと紫蘭の日々に安寧は訪れません。
主人公側にも容赦なく危機が降りかかるので、先が読めない展開に読者は終始ハラハラし通しです。
物語の随所に散りばめられる手記や断片によって徐々に紐解かれていく謎も必見。
妥協を許さぬ重厚なダークファンタジーが好きな方にはオススメの一作です。
ふとした日常、凄惨な殺戮、激しい戦闘。
そのどれもが、確かな文章力と知識に支えられて、凄まじいまでのリアリティを放っている作品です。
ファンタジーに該当するジャンルなので、当然現実的ではないのですが、確かに『そこにいる』『そこにある』という感覚になります。
そして注目はそのストーリーです。
レビューのため詳細は書きませんが、あまりにも悲愴なのです。それでも、必死に生き抜いている登場人物の姿に、心が強く動かされてしまいます。
さらに、世界観をしっかり構築しているのでしょう、説明に淀みや迷いがないのです。知れば知るほど、深く読んでしまいたくなる。
そんな作品です。
ダークな描写に耐性があるならば、是非とも読んでみて頂きたいと思っております。
最新まで拝読させていただきました。
こちらの物語は、「大崩落」という世界の変貌から巻き起こる地球を舞台にしたダークファンタジーです。
地球と言えど、舞台は現地球とはかけ離れている異世界のような世界で、魔法や様々な種族が交わり暮らす舞台となっています。
そこでひたむきに暮らす「紫蘭」というまだ小さな一人娘を持つ若い母親が主人公のお話です。その主人公自体にかなり謎が残されたまま話が進むので、ハラハラドキドキ、そして少しずつ解き明かされていく謎に「そういうことだったのか!」と思わず唸ってしまいます。
ダークファンタジーと一言では言い表せない濃い過ぎる世界となっており、グロテスクな描写がかなり目立ち、その濃厚過ぎる世界へいい意味で引きずり込まれること間違いなしです。
まずオープニングが圧倒的戦闘描写に圧巻。もう最終章かな?というぐらいな力のこもったリアルで疾走感がある描写で、思わず声が出そうになります。
登場人物もメインな人物は主役を含め女性6人程しかおらず、それぞれがかなり個性が強く、そのシーンごとに濃い行動をしていくので、内容もかなり頭に入って来ます。
基本的にその人物の1人称として話が展開していくので群像劇に近い感覚で読めるのも魅力的な一つだと思います。
全体的にかなりシリアスな内容になっており、目を覆いたくなるような戦闘シーンもかなりあります。いや実際見てるわけではないのですが(笑)
それ程に戦闘シーンがもう本当に度肝を抜く!!臨場感がすごい!!
そして心理描写もかなりあり、全ての登場人物の背景や思いが事細かに表現されており、作者さまの知識量、文才にもかなり尊敬を抱いてしまいます。
人物の容姿や性格、趣味嗜好など、事細かさにも圧巻!(本編で記載あり)
だからこそ、かなり細部にまでこんな風に物語を表現できるんだろうな~と思いながら読んでいました。
こちらの物語とは別で短編「ライブラ」があるのですが、そちらを先に読んでこの本編を読むと更に楽しめる事間違いなしです。
まだまだ謎の多いミステリー要素も強く、黒い濃厚な世界が好きな方、浸りたい方にぜひおすすめした物語です。とても大好きです。
犠牲から何を得るのか。
優しさとは欠け離れているこの世界。そんな場所へ足を一歩踏み入れてみると、自身が生きる世界もまた違った視点で見えてくるはず。
そんな素晴らしい気付きを与えてくれる本作です。
【簡単なあらすじ】
ジャンル:現代ファンタジー
旧人類が魔物と戦うために亜人種を作り出し、再び地上で暮らす日を夢見た世界で繰り広げられる物語。
ある夢を見た日、主人公の暮らす村は突如、魔物の大群に襲われる。夢の通りではなかったが主人公は夢と同じように大切なものを失うのだった。一方その頃、ある姉妹もまた絶望していた。彼女たちが再び出逢う時、物語は新たな展開を見せていく。
【物語の始まりは】
ある人物の後悔の記憶から始まる。それは主人公が見た夢でもある。憎しみからは、憎しみしか生まれないということを改めて感じる始まりだ。
虐めとは些細なことから始まりエスカレートしていくものだと思う。彼らは人工的に生み出された亜人種であり、人間とは少し違うのかも知れないが人間としていることは変わらないと思われる。人は自分と異なるものを受け入れられないものなのだ。それは弱いからなのかもしれない。夢の中の人物は、もしかしたら罠にはめられ、このような末路を辿ったのかも知れない。しかし、主人公に何故このようなメッセージを残したのだろうか?
主人公と彼女の繋がりとは?
【舞台や世界観、方向性】
魔物と呼ばれる未知の生命体、そして魔素と呼ばれる特異物質の存在する世界である。主人類は、魔物に打ち勝つため亜人種を作った。
3話になると視点が変わるのでこの物語は群像劇だと感じた。
混沌とした世界。魔物たちと闘う為に生み出された亜人種たちの生活は生半可なものではない。常に恐怖や命の危機に晒されていたことが物語を読み進めるにつれて明らかになっていく。
この世界には亜人種といっても1種類ではないらしい。段々と明かされていく世界の謎の部分がとても興味深い。
【主人公と登場人物について】
身体の弱い一人娘と暮らす亜人種の女性が主人公である。この世界には魔物が存在しており、両親も夫も魔物に殺されている。
主人公はどうしてこんなにも、と思ってしまうほど大切なものを奪われていく。そして大きな運命を背負っているのだと感じた。
この物語は、ある姉妹の視点からも紡がれていく。彼女たちもまた、何かを背負い縛られているように感じる。恐らく主人公の謎も彼女たちの謎も、いずれは明かされていくのだろう。
【物語について】
夢の後、違和感を覚えながらも、いつもの日常から始まっていく。主人公はいつもそうしているのだろう。娘と朝食をとったのち、仕事へ。しかしこの日はいつもと違っていたのだ。この日を境に彼女たちは、様々な非日常に遭遇していく。村への魔物の襲撃がターニングポイントだったのではなか?
失ったものもあれば手にしたものもある。ただ、平穏な日々はもう訪れることはないのだろうと感じた。それほどに彼女たちは過酷な世界に居る。そして新しい出会いと新たな展開。もしかしたら、段々と主要人物が主人公の元へそろって(集まって)いくのかもしれない。
【良い点(箇条書き)】
・この世界で生きる者たちの必死さが伝わって来る。
・旧人類は魔物を倒させるために亜人種を産み出した。もし、この世界がほのぼのしていたなら、そこにリアリティを持たせることは難しい。つまり、この物語では常に危険と隣合わせであることが表現されており、リアリティを持たせていると感じた。
・休む間もなく訪れる戦いの日々。この物語では主人公達以外の亜人種がどんな種族なのかについても語られている。彼らが必然で造られたことが伝わって来る。
・世界観や物語の設定が細かく、独創的である。
・面白い世界観だと感じる。
・常にヒヤヒヤ、ドキドキさせられる物語である。
・展開の予測がつかないので、先がとても気になる。
・戦闘描写も凄いが、心理描写が丁寧で共感を覚えやすい。
【備考】17話まで拝読
【見どころ】
17話までの時点ではまだ序盤だと思われる。一部難しい部分もあるが、世界観に独創性を持たせており、とても興味深い物語である。
主人公のみた夢は、予知夢なのかそれとも虫の知らせなのだろうか?
嫌な夢をみたその日、主人公は大切なものを失うこととなる。この物語は複数の視点から語られる群像劇であり、それぞれが背負っているものが違っている。主人公は大切なものを失い一旦村を後にするが、奇跡を手にいれ村へ戻るのだ。ここからが本当の始まりなのかもしれないと感じた。
手に入れた奇跡の対価とは? 果たして彼女たちはどんな末路を辿るのだろうか? 過酷な世界で対価を払うために生きる主人公の行く末を、その目で是非確かめてみてくださいね。お奨めです。
ハイファンタジーというジャンルの作品を書く上で避けて通れないのが〝世界観に基づく緻密な設定〟だ。
作品の屋台骨である世界観からその世界の論理法則に至るまで作者は考えを巡らせる。そして自ら構築したそれらの舞台装置の上で、物語の登場人物たちを活躍させる。
ハイファンタジーにおいて設定とは物語の心臓部であると同時に舞台装置そのものである。特に作品の独自性を出す上では極めて重要であり避けて通れないものだ。
だが、読者からの視点において作品の設定は諸刃の剣である。広い意味で幅広い読者に受け入れてもらえる許容量があるのだ。だから大抵の作者は妥当なところで妥協する。そうすることで読者に対する間口を広げるのだ。多くの人に読んでもらうために。
しかしこの作品は、一切の妥協をしない。
世界観と設定の裏側に何重もの仕掛けを施して、読者に対して挑戦する。緻密なまでに組み立てた、ダークファンタジーな世界観への挑戦者を待つかのように。
正直、万人向けではない。しかしだからこそ、他にないオリジナリティを作品の中に感じ取ることができる。作者のこだわりが光る作品である。
独特の空気感と世界観を持つダークファンタジー。確かな文章力と表現力で繰り出される凄惨な世界は、血の色。残酷描写は多めです。
物語の舞台は災厄後の未来の地球。世界は大きく変遷し、魔物という未知の生命体が生まれ、人類は危機に瀕して亜人種という新たな人類を作り出す。
主人公はどんな鋼も太刀打ちできないできない硬質な角を持つ、亜人種の女性、紫蘭。その角は何に使えるかというものでもなく、着替えで引っかかって服を引き裂いてしまったりと、かなり邪魔。だけどそんな角をもつ亜人種は他にはいないようで。
そんな彼女も娘に恵まれ、魔物に夫を殺される等の哀しい過去を背負いつつも、病弱な娘のためならと母親として精いっぱいに行動していくのですが。
親子を受け入れてくれた村に、魔物の襲撃。
紫蘭の世界はふたたび、闇と血にまみれていく。悲惨なあの「夢」とは違った形で、彼女を絶望へと。そこで出会った人物に与えられた奇跡は、彼女にとっての救いの一筋の光、福音となるのか。
彼女が背負った宿命と、成すべき事とは。
謎を多くはらみつつ登場人物を増やしながら、物語は更なる深淵へ。
ぜひとも最後まで追いかけたい作品です。
最初に叩き付けられる強烈な暴力・残虐・性描写は、アルコール度数の高い蒸留酒を思わせ確実に人を選ぶ。
しかしそれだけではない。
流麗な飲み口(読み口)に豊富なフレーバー(語彙)の数々。
丁寧に蒸留を繰り返されたことが判る巧みな構成。
マスターブレンダー(作者)の確かな知識に裏打ちされた詳細な設定は、作品の風味を自在に操れることを意味している。
ポストアポカリプスを彷彿とさせるスモーク香の中で、ほんの僅かに顔を出すクトゥルー神話(クトゥルフ神話)由来のヨード香も、のんべえ(神話ファン)には嬉しいアクセントだ。
そして、それらが怒涛の如く押し寄せた後に初めて気づかされる、ほんのりと甘く何処までも優しい余韻。
読者諸兄も、この芳醇で奥深い世界を一度味わってみてはいかがだろうか?
但し、読者諸兄が依存症になってしまっても、私は一切の責任を取れない。
何故なら、私自身がとっくに依存症だからである……。