良い意味で読む人を選ぶダークハイファンタジー

ハイファンタジーというジャンルの作品を書く上で避けて通れないのが〝世界観に基づく緻密な設定〟だ。

作品の屋台骨である世界観からその世界の論理法則に至るまで作者は考えを巡らせる。そして自ら構築したそれらの舞台装置の上で、物語の登場人物たちを活躍させる。

ハイファンタジーにおいて設定とは物語の心臓部であると同時に舞台装置そのものである。特に作品の独自性を出す上では極めて重要であり避けて通れないものだ。

だが、読者からの視点において作品の設定は諸刃の剣である。広い意味で幅広い読者に受け入れてもらえる許容量があるのだ。だから大抵の作者は妥当なところで妥協する。そうすることで読者に対する間口を広げるのだ。多くの人に読んでもらうために。

しかしこの作品は、一切の妥協をしない。

世界観と設定の裏側に何重もの仕掛けを施して、読者に対して挑戦する。緻密なまでに組み立てた、ダークファンタジーな世界観への挑戦者を待つかのように。

正直、万人向けではない。しかしだからこそ、他にないオリジナリティを作品の中に感じ取ることができる。作者のこだわりが光る作品である。

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