一読よくある「ゲーム世界への転生モノ」を舞台にしていますが、世界観の作り込み方が圧巻です。
この作品を読んでいると、ゲームの進行上では当たり前の設定や小道具が、
いかに理不尽で不可思議で非合法でご都合主義かを改めて痛感します。
それこそ、この手のストーリーでよく目にする
「この世界の人たちは実際に生きている(ゲームじゃないの)」
という転生ヒロインの言葉(あるいは心の声)すら、薄っぺらに感じるほど。
そして、それを攻略する側(転生女子)視点ではなく、
攻略される側(ゲーム世界の異性キャラクター)視点で展開されると、世界観、倫理観のエグさが本当に生々しいです。
本作の主人公は、そんな攻略対象者の中ではおそらく脇役ポジションとなる一介の伯爵家の三男坊。
(もっとも、彼自身は非常に勤勉な努力家で、若くして功績のある受勲者であり下位ながら尉官であり爵位持ちというウルトラハイスペック男子)
この三男坊を通して見る、「ヒロインを取り巻く世界」の一種異常性が際立ちます。
そして、一体何が「異常なのか」を一つ一つ丁寧に紐解いていくわけですが、
その過程で明らかになっていく真相が本当に容赦ないです。
10代の主人公が背負うには、あまりに残酷で過酷な責務と真実ですが、
それをポップな表現で軽やかに描くギャップが、いい味を出しているんです。
うっかり時折笑ってしまうのですが、
人物像の掘り込みや作り込まれた世界観の重さとエグさは、ちゃんとエンディングまで健在なんです。
それをサクサク読ませてしまう。
ゲーム性をちゃんと活かしつつ、浮世離れしない「異世界らしさ」を作り出している面白い作品です。
第一部までのレビューです。
本作は、作者様が初めて書いた小説なのだそう。
構成としては、よくある乙女ゲームの転生もので、ああ、テンプレものかと思いきや、とんでもない!
フレームはそのとおりなのですが、内容が、突っ込み、突っ込み、ひたすら突っ込みを入れていく。これ、コメディーなのかと思えるほど、面白いのです。
視点の中心も、転生ヒロイン側からではなく、美少女とも思えるほどの少年騎士ヴィゴーレからとなります。
ヒロインに夢中!? いやいや、ものすごく冷めているのですね。そう、視線が冷たすぎる。
謎もちりばめられています。それぞれに過去があり、ゲーム内の時間軸と織り交ぜつつ、物語が進行していきます。裏にいる神とやらの正体も気になるところです。
テンプレものと侮るなかれ。とても処女作とは思えないほど、ユニークで、斬新で、そして読みやすい!
一度読み始めれば、はまること間違いありません!
悪役令嬢物、乙女ゲーム転生物、確かに枠組みとしてはそれが利用されているのだろい。ただし、そればかりと思うこと勿れ。
非常に読みやすくさくさくと進むようにすら感じる文章でありながら、この世界は奥深い。
中心にいるのは女の子とも見紛うばかりの美青年騎士。彼もまたゲームの攻略対象者としてヒロインに愛を捧げる……はずであった。
さて、どうなったのかは是非とも読んで確認してもらいたい。そして彼らの過去を挟み、再び物語はゲームの時間軸へ。
なぜこのようなことになっているのか、神の思惑とは何なのか。目の離せない世界の裏側が見えそうで、非常に楽しみである。
ぜひご一読ください。
とにかく「ヴィゴーレ」という女の子に見間違うような「美青年」がめちゃくちゃ可愛い。
素直な性格、悪意にモノともしない純心を持ち、容姿も抜群。
そして、可愛い(二度目
作者さんの近況ノート、ツイートに載ってるので是非見て下さい。
https://kakuyomu.jp/users/PiroshikiUtagawa/news/16817139557056859695
綺麗な赤髪の三つ編みにしている「あのコ」です。
男のくせに三つ編み??
理由がきっちりあります。異性の目を惹くためでも、お洒落でもありません。
彼が彼の仕事を行うために「必要だからやっている」三つ編みなんです。
このコが就いているお仕事はとても壮絶。
それでも笑顔で素直で真っ直ぐに生きるヴィゴーレさん。
是非彼の生き様を見て欲しいです!
===============================
この作品には複数の物語が存在します。
ピンク頭の~から始まるタイトルの「第一部」と「古都の追憶は夏空の彼方へ」です。
恐縮ながら「古都の追憶は夏空の彼方へ」から読み始めさせていただきました。
ヴィゴーレさんの奮闘が濃厚に描かれるのは「古都の追憶は夏空の彼方へ」だと思いますし、このレビュー内容もそこの部分から書かせて頂いております。
ひつまぶしのように二度も三度も楽しめる作品として、是非手に取ってみて下さい。
慣れ親しんだ令嬢ものでも、ちょっとしたスパイスで、暑い夏も食欲増進!楽しく読めるのは、みなさんご承知。
さらに、時代考証をキッチリやってのける作家さんともなれば、大人の読書にもピッタリというのが、こちらの作品。
もとより、次々と展開するストーリー運びに読む手が止まらず、乙ゲーをサンプルになじみある話運びの影にのぞく、不穏と黒幕。
一枚幕を剥がした向こうに広がる謀略に調略。
例えるなら、各国を股にかけて陰謀を企む組織を相手にギリギリのところで渡りあうサスペンスアクション映画のようです。
一部のラストシーンは圧巻で、「全読者が泣いた!」のキャッチがよぎりました。
そして、幕間以降がさらなる本領発揮。みんな大好き、飯テロの時間。
リアルに考証ベースだからこそ味わえる美味を求めて、ちょっと昔の欧州へ。活劇の旅に出かけませんか?
■読み進めて最初に気づいたのは『あ、これ悪役令嬢ものか?』という疑問だった。言い方は悪いがいわゆるジャンル物である。物語を創作していくにあたり、様々なジャンル分けというのは存在する。そうした中で定番ジャンルというのは存在し、定番であるがゆえの基本フレームも存在する。この作品の場合、相当するキーワードが〝悪役令嬢〟と言う基本フレームなのだ
■しかしこの作品の場合、その基本フレームは定番通りには進まない。物語視点はヒロインではなく、本来であれば傍観者であるはずの1人の騎士見習いの少年を軸として進む。王子とヒロインと悪役令嬢、そしてその取り巻き。それを一歩下がった立ち位置視点から本当の主役のヴィゴーレが事件の真相を暴くべく行動を開始する。そうこの物語の本当の物語フレームは悪役令嬢ではなく〝ミステリー〟や〝サスペンス〟に近いものなのだ
■この国の王子殿下とヒロインのエステル、そしてエステルにいじめを働くご令嬢――、そのイジメの真実を突き止めると言う任務をヴィゴーレは命じられる。そして地道な行動の末に見えてくる様々な事実。そして彼はヒロインの本当の姿を知り、だが本当の被害者なのか? その一端を知る。そして世界に仕掛けられた歪んだシナリオを暴くための一世一代の行動が始まる
■その歪んだシナリオの正体が何なのか? は本編を見てもらいたい。それにしてもこのヒロインやっぱ酷いわ(笑)
従来の乙女ゲームヒドインのざまあものとは一味違う物語です。
なんと、悪役令嬢ではなく、モブ扱いにされがちな王太子の側近がヒドインに正当な証拠を持って断罪へと持っていきます。
しかし、ただの乙女ゲーム者とは違い、そこに行きつくまでの道のりがひたすら険しくて……
また、番外編にて発揮される、緻密な舞台設定の詳細な描写にも注目!
苦労性だけど最強で、可愛いけど闇を抱えていて、人一倍誰かのことを想えるヒーロー、ヴィゴーレを中心に回ってゆく物語。
心根の腐った、外側は美しい創生の月虹女神と、心優しい外側は(物理的に)腐った月蝕女神のしろしめす世界の中で、彼は何を思うのでしょう?