13
水着を脱いでみてよく分かった。体を物凄い圧迫していたんだって。ゆったりしたノースリーブに着替えると、解放感の凄いこと凄いこと。息が楽に出来た。一回しか着てないから勿体ない気もするけど……処分するしかないかな、これ。
なんて物思いに耽ってる場合じゃない。とっととこのじめじめした場所を出よう。
また『遅い!』なんて言われるのかと懸念しつつ、ゲートで待つ彼の許へ、忍び足。
「……せめて髪乾かすくらいのことはしなさいって」
別に脅かそうって意図があった訳じゃないから、第一声がこれ。お節介かもだけど。
「めんどくさいんだよ。これシャワーの水だし、ほっときゃ乾くだろ?」
……シャワーを浴びたってだけでも良しと……する?
「じゃ、帰ろっ………」
か、と続けようとしたのだ・け・れ・ど。
(しまったあぁぁぁっ!)
うん。階段。
登ってくる時は夢中になっててすっかり忘れてたけど、ゲートがちょっと高いところにあるの。つまり、階段を登った、ってわけで……下りるときのことなんかこれっぽっちも考えてなかったわけで………
「ほら百合……うゎぁぁぁー……――――」
足が竦んで立ちつくしていると、彼は私の方を向いたまま、出した足を踏み外し、何と階段を転げ落ちたのだ。
「白河君!」
踊り場のない、その煉瓦製の階段を、体のあちこちを打ち付けながら、彼は一気に落ちていった。
私は某ぬいぐるみのキャラクターみたいにどどどどどうしよう、と泡を食って狼狽していることしかできなかった。だけど目に飛び込んでくるのは転落を停止して蹲っている彼の姿。今にも呻き声が聞こえてきそうだった。
(白河君っ………)
あまり距離がなかったから、彼が潤んだ目で見上げているのがハッキリと見て取れた。
「っ………」
無力な自分が悔しい。涙が頬を伝った。
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