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なんだかんだしているうちに、気が付けば夏休みに入ってしまった。ああこれでもう彼に付きまとわれることも、彼の馬鹿な提案を呑むこともしなくていいんだなあと思うと、気が楽だった。
だけどそんなものは束の間の安息に過ぎなかった。
終業式の日、彼がやけに大人しくしていた理由が分かったのは、午後三時を回った頃、ケータイの着信音が鳴った時だった。誰からのメールだろう、とケータイを開いた。私はその目を疑った。差出人名は『白河佑一』だった。
「え? 何で?」
彼にメアドを教えた覚えはないはずだけど……? 恐る恐るメールを見た。
『件名:百合へ
本文:どうだ驚いたか百合!お前の知らない間にこのケータイに番号とアドレスを打ち込んでおいた!どっちが先に克服するかという勝負は始まったばかりだ!覚悟しておくがいい!』
「………………」
絶句。
何で………どうして………?
あ、もしかしたら、体育の着替えで私の手を一時的に離れた時に美裕が打ち込んだのかもしれない。奴に脅されて。
それにしても、何と挑戦的なメールだろう。まるで勝つことを確信しているかのような。やや嫌悪感を抱きつつも、私は何故か宣戦布告のメールを返信した。
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