美しの森、こもれ日と暗がり。

異国。19世紀フランスが舞台。
身分違いの少年たちの光と闇、青春の物語です。

「ただ、美しかった」そのために大いなる苦しみを背負わされた少年・ジュール。そしてその心を支え続た太陽の恋人・ヤン。少年たちは年若く、あまりにも無力です。そして優しすぎる……大人たちに傷つけられ、利用され、ぼろぼろになって、のた打ち回る。

幸せ。転じて不幸せ。その繰り返しで、たいへん苦労します。

それでも身体は成長するし、心は強くなる。登場人物には、悪魔のような人もいれば、手を差し伸べてくれる人もいて、皆それぞれ階級ごとの人生と悩みがあり物語と共に生きています。なかでも私は――フレデリック。じつは一番好きなキャラクターです。深い……もし機会があるならばスピンオフなどでその一生を拝見したいほどに。

『ジュールの森』という題に込められた、深い想い。

あらすじ、タグと、物語へのヒントは至る所に記されています。それにより不穏な空気を察する事でしょう。しかしこれらは、作者様の心優しいご配慮です。物語そして登場人物たち全てを大切に想ってるからこそなのです。直接的表現は殆どありませんが、愛とその痛みを存分に堪能なさってみてください。

「少年愛」の物語に傾倒した方ならば、強く惹かれるお話です。退廃的な道をたどるのかと幾度となく肝を冷やします。ですが、読み終えると、ほろり……やっと希望がさし込みます。少年たちの彷徨う心。じっくりと読み耽って頂けたらとおもいます。

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