僕がたったひとつだけ信じているもの

引き返すなら今です。
ジュールの森に一歩でも足を踏み入れてしまったなら、貴方はもう戻る事は出来ないでしょう。

19世紀末、フランスのこの上なく魅惑的な美しい森の中は、どこまでも深くて、暗い闇に包まれている。光や出口が見えかかる度に引き戻され、抗えないのはどうしてなの? 
なぜなら、その森はそんなふうに出来ているから。
足元に絡みついているその鎖を絶ち切ることができないなら、どうすればいいの?

美し過ぎる容姿を持って生まれてきたばかりに、少年ジュールが背負わさた残酷過ぎる運命。世の中の何もかもを信じる事が出来なくなっても、生き抜く事が出来るのは、たったひとつだけ信じているものがあるから‥‥‥

この小説を通して感じるどうしようもない憤り、人間の愚かさ、怒り、悔しさ、やるせなさ、といった物があるからこそ、純粋な心で懸命に生きる者の美しさに心を奪われてしまうのでしょう。

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