第6話 5歳児のお仕置き

■リーブル皇国 皇帝ドレッシングルーム


「陛下、それでは礼服の採寸を行います」


ハンスが裁縫士を二人連れてきた。

裁縫士の頭の上には黒玉が浮かんでいる。

まあ、それは皆がそうなので気にしても仕方が無いだろう。


問題は黒狼と白虎の反応だった。

親友たちはハンスから話を聞いたときに反応していた。


この裁縫士のどちらか、あるいは両方は俺を暗殺するつもりのはずだ。


これまでも月に1度ぐらいの頻度で暗殺計画がある。

黒狼と白虎に守られているので力づくというのは無かった。

ほとんどが毒殺狙いだ。

だが、これも食事や飲み物が出される前から親友たちが排除してきた。


俺の前まで毒物がたどり着くことは無い。

先王も俺と一緒に食べるときは何度も親友に助けられている。

いつも、一緒にいれば良かったものを・・・


白虎が右から、黒狼が左から、裁縫士にゆっくり近づいて行く。


フム、右の若い女のほうだったか。

白虎が飛び掛った!


女は悲鳴を上げたが、両肩に足を乗せられて全く動くことが出来ない。


「その者は余の暗殺を企てた者だ。決して殺さずにお仕置き部屋へ連れて行け、自害もさせるな。もう一人もことが判明するまで牢に入れておけ」


「ハンス、そのものの持ち物を薬師(くすし)に調べさせろ毒があるはずだ」


「かしまこまりました。」


近衛兵が入ってきたので、白虎はお仕事を終えて戻ってきた。


はぁ、俺はお仕置きは趣味じゃないんだけどな。


■リーブル皇国 宮殿地下 お仕置き部屋


白虎に乗って、地下のごうも・・・お仕置き部屋へ降りていく。


頭の中のもう一人は、このお仕置きや処断を嫌っている。

他に方法があるはずらしい。

だが、他の方法を教えてくれることは無い。


頭の中のもう一人は殺されると思ったことが無いのであろう。

俺は月一ぐらいで狙われるから、それが当たり前になっている。

当然、他の人間を殺すことに何の抵抗も無い。

俺が生きるためだ。


お仕置き部屋にも数少ない白玉がいる。

名前はリッチーと言う男だ。


こいつが白玉の理由はひとつだけ。

俺がこいつをお仕置き担当にしているからだ。

用はお仕置きが好きなのであろう。


女は手足を椅子に縛り付けれられ、全裸で座らされている。


「陛下、このような場所にお越しいただき、恐悦しご・・」

「前置きはよい、何かしゃべったか?」

「いえ、まだ口かせをつけておりますので」

「話せる程度に緩めろ」


「陛下、誤解でございます。決して陛下を・・・」

「黙れ、余の質問以外に答えるな。逆らえば、指を一本づつ落とす」

「ですが、・・ギィャァーーー」


馬鹿が、リッチーを喜ばせおって。

左手の小指が床に落ちている。


リッチーはすぐに痛み止めの軟膏と止血帯を巻きはじめている。

女の悲鳴が続いている、うるさくてしょうがない。


「あー、誰のめいで余を狙った。正直に言えば楽に殺してやる」


女は大粒の涙をこぼしながら必死で首を横に振っている。


「そんなことはしていないと・・・、そう言いたいのか?」


今度は縦に首を振っている。


「ふむ、そうか。そうかも知れんな。余も神ではないから真実を知っているわけではない。だが、余が貴様を暗殺者と決めたのだから、それがくつがえることは無い」


「よって、これから貴様がどうなるかを伝える。余が納得いく返事があるまで、1分毎に指を切り落とす。切り落とす指が無くなれば体を焼く。焼いた肌には塩を塗ってやる」


「やりすぎると死ぬかも知れぬが安心しろ、そこのリッチーは天才だ。死ぬ手前でやめてくれるぞ、そして治療してくれる」


「親切であろう。だが、傷が癒えた頃にあらたな痛みを与え続けることを約束しよう」


「ひとつ言い忘れておった。そなたには家族はおるのか? 今、余の部下たちが探しに行っておる。家族がいれば見つけ次第、貴様と同じ痛みを与えることも約束しておこう」


「では、改めて聞く、誰の命で余の命を狙った?」


「すべてお答えします・・・」


フム、指一本で終わったか今日はスムーズだな。

リッチーが不満で黒玉にかわるやも知れんな。

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