第11話 5歳児と土木開発

■リーブル皇国 皇帝謁見の間


やっと、内務卿と外務卿が案を持ってくるらしい。

両方の意味で期待している。

俺の期待を裏切らないで欲しいものだ。


「陛下、本日もご機嫌麗しゅうぞんじます」

「貴兄もな」


「本日は私が内務卿として、わが国の支出内容を見直した結果、国庫の支出のうち約3分の1が土木開発工事によるものだと判明いたしました。」


自慢そうに言っているが、そんなものは自明だ。

貴様が発見したように言うな、この・・・

まあ、最後まで聞いてやらねばな。


「そこで、私はこの開発工事を3割減らすことで国庫の支出を削減することを上申いたします。」

「・・・」

「・・・」


「内務卿よ、それで終わりか?」

「左様でございます。」


「では、教えて欲しい。どの開発工事を削減するのだ?」

「どの? 全てを3割削減いたしますが。」


「そうすると、工事はどうなる。」

「多少は完成が遅れることになろうかと。」


「多少な。多少というのはどの工事がどの程度遅れるのだ。」

「それは、まだ確認しておりませんが・・、全てが多少は遅れることは否めません。」


はあぁ、ここまで丁寧に説明してやる義務が5歳児には無いと思うんだがな。


「良いか、今進めている大規模工事のうち、西部の堤防改修と南部の大橋新設はいずれも10年かけた工事だ。それも、あと1年以内に完成する」


「反対に東部の大橋新設は昨年着手したばかりであろう。完成にはまだ10年かかる」


「なぜ、すぐに完成するものから優先して工事を継続せぬのだ。10年かかるものは12年になっても構わぬ」


「金の使い道に順序をつけよ!!」


頭の中で、センタクトシュウチュウ、ユウセンジュンイと叫んでるやつがいる。


「わかったら、1週間以内に開発工事を一覧にして、進めるものと停めるものを持って来い!! それによる費用削減の金額も工事毎につけるのだぞ!!これが最後だ、できぬなら貴様をくびにして領地も取り上げる。良いな!!」


2馬鹿の片割れは走って出て行った。


はぁー疲れる。


皇帝っぽく大きな声を出すのは大変だ。

甲高い声ならいくらでも出るのだが、5歳であってもリーベル皇帝には相応しくない。

たまには「そうでちゅね」とか言ってみたいものだ。 


ん?待てよ、 一覧にされても、まだ字が読めなかったな。

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