「海の悪魔」
とある日の午後、マリアナ海溝を歩いていたら、巨大なタコに行く手を阻まれた。「魂をお売りください。壊れていてもかまいません」
突然そんなこと言われても……。たじろぐ私に大ダコはウインクした。
「ご安心ください。ふつうの悪魔は海に潜れないため、海中での魂集めはわれわれタコが請け負っているのです。魔界公認です」
そういう問題じゃなくて。と制するより早く、タコは宝石を差し出した。八本の触腕の先に煌めく、色とりどりの美しい結晶。
「沈没船に眠っていた財宝です。さあさ、お好きな石をお選びください」
これだけの元手があったら、原宿の一等地にお店を開いてやっていけるよ。
「ほんとうですか?」
目を輝かせたタコを引き連れて、私は東京湾を目指す。口元には天使のスマイル。頭の中ではタコ焼き屋の名前を書いては消して検討している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます