「コワレライト」
地球からとおく離れた未知の宇宙で、探査船はキラキラ輝く破片を拾った。
周辺の宙域を調べたところ、同じような断片がいくつも闇の中を漂っていることがわかった。回収してつなげてみると、それは小さな星になった。
<すみません。修復していただいて>
と星はいった。調査団は問いかけた。
「星よ、あなたはなぜ壊れてしまったのですか?」
<私は可能性の星なのです>
星はひそひそ声で告白した。
<人類が地図を埋め、未知を既知に変えるたび、ひとつずつ、私のような星が壊れます。あなたがたがこの地点を観測する前、あるかもしれないと思い描いていた星が私です。本当は存在しないので、発見される前に完全に消える段取りだったのですが、ちょっと失敗してしまったようですね>
星はばつが悪そうに付け加えた。
<お手数ですが、もう一度私を壊して捨ててください。宇宙のつじつまを合わせるために>
探査船のクルーたちは、この申し出を丁重に拒否した。深宇宙の旅路は行けども行けども広大無辺で、ときおり心がつぶれそうになる。きらめく可能性の星を倉庫のいちばんいい場所にしまい、船はふたたび闇の中をすべり出した。
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