「めあ」

 めあ、やばくない? 

 ふつうの雨は上から降るけど、めあは下から降ってくるから、油断してたら防げない。昔の人は、突然この世に現れためあになす術もなく、めそめそしながら濡れ鼠になってたらしいよ。今では人も進化して、腕の筋肉が発達したから、傘をひろげた姿勢のまま180度反転して、ホッピングの要領で移動できるようになった。でも、おおめあの日はやっぱりたいへん! 梅雨には雨とめあが同時に攻めてきたりするから、足でも傘をささなきゃだしね。いちばん厄介なのは、夜のめあ。闇にまぎれて足元から襲いかかるめあは、ナイトめあって呼ばれて忌み嫌われてる。

 でもね、ほんとはね。なんだかんだ嫌いじゃないんだ、めあのこと。ふつうの虹にはどんなに背伸びしたって届かないけど、めああがりの虹は、近いから。

 ほら、交差点で信号待ちをしてるときとかに、曇った地面がさあっと晴れたら、逆立ちのまま足元の空をのぞきこんでみるといいよ。そのとき、あなたは虹に乗れるから。逆さまのアーチのてっぺんが、すぐそばにあるかもしれないから。

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