14話 vs魔獣スフィンクス②

 無効化アンチスキル

 あらゆるスキルや魔法の効果を打ち消すスキル。


 ユニが一角獣化し、スフィンクスと戦ってくれている間に僕はこのスキルの事を思い出した。


「……良かった。なんとか上手くいきましたね」


 すぐに無効化を発動させると、思ったとおり結界の効果を打ち消す事ができた。


 上手くいくかどうかは、五分五分の賭けだったけど。


「ユニ! エミリカ! ハクア!」


 僕が叫ぶと攻撃の準備をしていたハクアとエミリカが魔法を発動させる。


火炎陣ファイヤトルネード!」


聖なる息吹ホームブレス!」


 轟音を唸らせ、二人の放った魔法がスフィンクスを直撃した。


「グオオオオオ!?」


 苦痛に顔を歪めスフィンクスが鳴いた。


「いっくよぉ! 疾風ライトニング迅雷サンダー!」


 人の姿に戻ったユニが、追い討ちをかけるように魔法を放つ。


 激しい雷がスフィンクスを貫く。


「まだまだ終わりじゃありませんよ、スフィンクスくん!」


 僕はさらに追い討ち攻撃を仕掛ける。


「――無限の刃よ、敵を貫け!」


 僕が作り出した鋼の刃が無数に出現し、一気にスフィンクスへと襲いかかった。


 数千、数万の刃がスフィンクスの全身に突き立てられていく。


 全身を貫かれたスフィンクスは一度体を揺らすと、そのまま倒れた。


「やったぁ! スフィンクス撃破ぁ!」


「ふぅ〜……一時はどうなるかと思ったわよ。でも倒せてこれで一安心ね」


 ユニとエミリカは、安堵の表情を浮かべて喜びあっている。


「ん? アルテイ、どうしたのじゃ。スフィンクスの彫像など出しおって」


「いえ。もしかしたらこれがトラップの引き金トリガーだったのかなって考えてたんです」


「……ここは古代王朝の墳墓じゃ。もしかしたら盗掘対策として施された罠だったかも知れんの」


 気にするな、とハクアは言って笑った。


「とにかくじゃ。皆、無事だったのじゃから良しとするのじゃ」


「……ええ」



 ○



 時間稼ぎのためにスフィンクスと戦ってくれたユニの傷を、僕の能力で治した。


「うわぁ……えへへ、ありがとうねぇ、アルテイ」


「お礼を言うのは僕の方ですよ。ユニが戦ってくれたからこそ、スフィンクスを倒す事ができたんですから」


「そう……? ユニ、初めてアルテイの役に立てたかも。えへへへ」


 ユニは照れくさそうに微笑んでいた。


「アルテイ。試験に必要だと思うから、とりあえずスフィンクスの一部を剥ぎ取ってきてあげたわよ」


 エミリカがスフィンクスの切り取った部分を、ぷらぷらとさせて、僕に見せてくる。


「ああ、ありがとうございます。エミリカ」


「べ、別に。試験に必要だからやっただけなんだからね? と、とにかく、無くさないようにちゃんと持ってないさいよ」


「あはは。分かってますよ」


 スフィンクスの切れ端を受け取ると、僕は道具袋に入れる。


「さてと……それじゃあそろそろ帰りましょう」


「ねぇ。今度こそ転移、使うんでしょうね? ここから歩いて戻るなんて言わないわよね?」


「ここからはさすがに転移しないと戻れそうもありませんからね。今回は遠慮なく使わせてもらいますよ」


「やった! そうじゃなきゃね」


 この部屋から、元いた墳墓に戻る事は不可能なのだ。


 スキルが使えるようになったとき、僕はこの部屋の位置情報を把握していた。


 ここは墳墓迷宮からかなり離れた場所に作られた部屋みたいで、一度入ると二度と戻れない仕掛けがされていた。

 ハクアが言ったように、盗掘対策の部屋なのかも知れない。


 僕が調べた限りじゃ、あの墳墓にはもう宝は無かった。

 今まで宝を持ち帰ろうとした連中は、漏れなくここに飛ばされて、スフィンクスの餌食になったんだろう。


「ねぇ、どうしたのよ? 帰らないの?」


「……はい、帰りましょう。転移!」


 僕たち四人は地上まで一気に移動した。


 こうして僕たちの冒険者採用試験は終わったのだった。



 後日。

 鑑定してもらうと、スフィンクスの彫像は、歴史的価値が高く希少な宝だと言うことが判明した。

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