勇者パーティの雑用係だった僕は、【全能スキル】で世界最強へ〜神獣少女たちと超レアスキルで無双する〜

魔王の手下

1話 好きな子を奪われて追放されました

 この世界は今数百年ぶりに魔族の侵攻を許してしまっていた。

 各国からは大人数の討伐隊を差し向けているが、魔族は強く、その多くが戦果を上げれない状況が続いていた。


 そんな中、次世代の勇者と呼ばれている奴がいる。

 名前はファウスト・ミギュラー。


 実際、勇者の末裔でもある彼は、王族や国民からの人望が厚い。

 実力も折り紙付きだし、男前だから女性が放っておくはずがない。


 ファウストは僕と同郷出身で自慢の親友だ。


 幼馴染のマリンと俺とファウストの三人がパーティを組んで数年。

 錬金術師になった俺は、後方支援としてパーティに貢献していた。


 今日も魔王軍の一派と一戦を交えたあと、野営地で明日の準備をしている最中に、僕はファウストに呼び出されていた。



「お前は今日で解雇だ、アルテイ」

「え……!?」


 突然の解雇に僕は言葉を失った。


 僕を見ているファウストの表情は、どこか冷たく感じさせる。

 親友のファウストのそんな顔は、俺は初めて見た気がした。


「り、理由を教えてくれないか、ファウスト?」


「理由ねぇ……お前さ、戦闘で役にたった事ってあったか?」


 言われて僕は今日までやってきた事を思い出すように振り返る。


 僕の仕事と言えば、回復薬の錬成や荷物持ち、その他雑用をこなす。

 それくらいしか無い。


「た、確かに戦闘では主だって役には立ってなかったけど――」


「……だよな? 俺達は今や魔王軍と最前線で戦う勇者一行とまで呼ばれているんだ。そんなパーティに役に立たない錬金術師がいると知れたら、世間がどう思うかくらい分かるよな?」


 最後まで言わせて貰う事もできないくらい、ファウストは静かに怒気を出している。


「ねぇ、ファウスト……」


「マリン……なんでここに?」


 いつの間にか、ファウストの背後にはマリンの姿があった。


 僕はマリンに訴えかけるように視線を向けた。


 マリンなら、きっとファウストを説得してくれるはずだ。

 情けない話だが、今の僕にはそれにすがるしか無い。


「……ファウストの言う通りにして、アルテイ。あなたが居たら、私達の評判が悪くなるのよ」


「そ、そんな……」


 僕は自分の耳を疑った。

 いつも優しく僕を他の仲間から庇ってくれたマリンが、そんな事を言うなんて信じられない。


「残念だったな、アルテイ。マリンはとっくの前にお前に愛想が尽きたんだよ」


「ちょ、こんな場所でやめてよね……」


「な……!?」


 俺の目の前で、ファウストがマリンの肩を抱きしめた。

 マリンはうっとりとした瞳で、ファウストを熱く見つめている。


「つまりさ、こう言う事だ。マリンも俺も、もちろん他の仲間だってお前が邪魔なんだよ」


僕がマリンを好きなのを知ってて、ファウストは見せつけているんだ。

 ファウストは僕を見下すように見ている。


「このっ!」


 そう思った瞬間、僕は体が勝手に動いていた。

 ファウストに掴みかかろうとした僕の前に、マリンが両手を広げて立ち塞がった。


「辞めて、アルテイ! 私の大事な人に手を出さないで!」


 今まで見せた事がない怒りの表情で、マリンが僕を睨んでいる。

 彼女はもう完全にファウストの物になった事を僕は悟った。


「何をやっているんだ、アルテイ!」

「――!?」


 きつい一撃が俺の後頭部を殴りつけられた。

 振り返った先にいたのは、戦士のゴリアテと僧侶のフヨウがいる。


 二人は僕を軽蔑するかのような表情で睨んでいた。


「無抵抗なファウストに何をしようと言うのだ! 事と場合によっては容赦せんぞ、アルテイ!」


「勇者であるファウストさんに、暴力を振るうなんて酷いですよ。アルテイさん!」


「そうだぞ、アルテイ……次世代の勇者と呼ばれる俺に手を上げるって事は、世界を敵に回すって事と同意なんだぞぉ?」


 勝ち誇ったような表情を浮かべるファウストの、その顔。

 なんて忌々しい顔で僕を挑発してくるんだ。


「仲間に暴力を振るうような奴は、今すぐここから去って貰おうか? ええ、雑用しか能がない錬金術師さんよぉ」


「役に立たない上に、暴力までとは……見下げた奴だ、お前は!」


「早く出て行ってください! あなたの顔なんてみたくもありません!」


「う……」


 もう一度、僕はすがるようにマリンに視線をやった。


 彼女は軽蔑の眼差しで、僕を真っ直ぐに見ている。


 もうこれ以上何を言ってもダメだ。

 僕は最低限の荷物をまとめて、四人に頭を下げた。


「……今までありがとう」


 四人からは僕に一言もなかった。

 早くどこかへ行けと言う無言の圧力だけは感じる。


 僕はこうして、野営地を後にした。


「これからどうすればいいんだろう……僕は」


 時間は夜。

 そこら中に危険が待っている暗闇の中へと僕は踏み出していた。

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