7話 vs魔界四天王の一角
魔界四天王グンニグルの居城最上階。
僕は迷宮を通らず最上階まで転移スキルでたどり着いていた。
魔界四天王・魔槍使いグンニグル。
不死王とも呼ばれるアンデットの王・リッチ。
冷酷無比で残忍な性格だと言われている。
僕は最上階のグンニグルがいる部屋の巨大な扉を開ける。
玉座の間に入った僕は、目を背けたくなるような凄惨な光景に愕然としていた。
「た……助けてぇ!」
「いやだああ!? 殺してくれえええ!」
「お……お母さ……」
オーク達が、捕まえたであろう幾人もの人間やエルフ達を斬り裂き、槍を突き立て弄んでいた。
「グフフフ……楽しい光景よのぉ」
玉座に座っている四天王グンニグルが、目を細めて悦に浸っている。
「――グンニグルっ!」
「グフフフ。また愚かな人間が我を倒しに来たのか、愚か者が……まあ、良い。やれ、オーク共」
「ゴフっ!」
命令された数十匹のオーク達が、武器を手にして一斉に襲いかかってきた。
「
バッと出現した無数の高エネルギー球が、飛びかかってきたオーク達の頭を一瞬にして貫いた。
「……ほう。どんな魔法を使ってオーク共を消したのだ?」
グンニグルの瞳が妖しく揺らめいた。
「そんな事よりも、その足元にいる人たちを解放してください」
「グフフフ……それは聞けぬなぁ!」
「何をするんですか!?」
まだ息のあった人たちをグンニグルは躊躇いもせず無残に踏みつける。
「――ぐぎゃ」
ゴリゴリと骨が砕ける音と彼らの小さな断末魔が僕の耳に聞こえた。
「これは我の玩具。どうしようが我の勝手だろうが!」
「……玩具ですって? 人を玩具呼ばわりするなんて、絶対に許せませんね! 照――」
グンニグルが床に倒れていた女エルフの首を摘み上げた。
「そこまでだ! それ以上おかしな真似すれば、このエルフの首が千切れるが……どうするか、人間よ?」
「……どうもしませんよ。そのエルフさんを助けて、あなたを倒すだけです。僕はそのため、ここに来たんですからね!
巨大な槍が僕の頭上に現れた。
僕は続けてスキルを発動する。
「
その言葉通り、槍は一直線に発射されグンニグルの胴体を貫いた。
「……貴様。我が言った言葉、忘れた訳ではあるまいな?」
「言葉? ああ、人質のエルフさんの事ですか。それならもう僕が助け出していますよ」
「なに!? 貴様、いつの間に!?」
「さあ、あなたが槍に貫かれたあたりだったかな」
槍を放ったと同時に、僕はグンニグルに捕まっていたエルフを救い出していた。
もちろんこれも僕の能力の一部によるものだ。
「小賢しい人間が……これ以上は好きにはさせんぞ!」
苦々しい表情をしたグンニグルが、ギリっと歯軋りをした。
さすがに槍だけじゃ倒せないみたいですね。
胴体に空いた穴も塞がっているようですし。
「さすが不死王と名乗るだけなありますね。ですので、今から僕はあなたを蹂躙させていただきますよ」
「――なんだと!?」
僕はまずグンニグルの足を石化させて、動けなくさせた。
「ぐっ!? 我の足が!?」
「まだまだですよっ!」
僕は殺傷能力の高いスキルを、グンニグルに向けて何度も発動させた。
僕の一方的な攻撃は三十分も続いた。
どんなに攻撃を受けても、グンニグルは倒れる気配がまるでない。
でもグンニグルの回復力は高く、なかなか決定的なダメージを与える事ができないでいた。
「グフフフ……どうした、それで終わりか? 貴様の攻撃など我には一切効かんのだ! グフフフ!」
「困りましたね……」
「グフフフ……我を倒せるのは魔王様だけだ。貴様ごときに人間に我が倒せる思うな!」
確かにグンニグルの言うとおりだ。
このままずっと攻撃を続けても、グンニグルには意味がない。
「さあこの石化を解け! さすれば貴様を楽に殺してやるわ!」
「それはお断りさせていただきますよ。それにあなたを倒せない訳じゃありませんからね」
「――なに!?」
「……
僕が言葉を言い終えた後。
グンニグルの背後に、巨大な黒い球体が現れた。
「な、なんだこの術は!? 魔法か!? いやスキルなのか、これは!?」
「これは周囲の時空を非常に強い重力で歪めるスキルですよ。もちろんそれだけの能力じゃありませんがね」
「時空を歪める……だと!? な、なんだ我の体が引き寄せされる!?」
「その球体の中から無限大の重力が発生していますからね。そのままなら数分であなた諸共、居城も吸い込まれるでしょうね」
「ば、馬鹿な!? これほどの質量を吸い込むだと!? 貴様は我に何をしようと言うのだ!」
「死なないあなたには、光も届かない永久の闇の中に、居て貰おうと考えただけですよ」
「え、永遠だと!?」
「ええ、そうです。それではさようなら、四天王グンニグルさん」
助け出したエルフを抱きかかえると、僕は転移でグンニグルの居城を後にした。
僕たちが去る、ほんのわずか垣間見えたのは、城が瓦解していく中グンニグルが重力波に吸い込まれていく姿だった。
僕は助けたエルフと共に、再び三人が待っている場所に戻ってきた。
「――おかえりなさいませ、ご主人様」
ミディアが少し微笑んで、僕を出迎えてくれた。
「ただいま、ミディア」
僕も彼女に微笑み返した。
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