《わすれない》

ひとはかならず、死にます。それは誰でも。有名になろうと、そうでなかろうと。早い遅いの違いはあれども、最期だけは決まっています。
そうしてひとは二度死ぬといいます。活動が止まったときと、忘れられたとき……
女優にして「僕」の元恋人は、若くして余命宣告を受け、「忘れられない女優」になりたい、と望みます。そうして物書きである「僕」に依頼するのです。
「私の最期の時間を、書いてほしい」と。

最後まで読み終え、いま、あぁ……と感嘆の息を洩らしています。ひとつの映画を観終えたような充足感と、喪失感がずうんと胸のなかに響いてきて、なんともいえないきもちです。
確かにひとが最後に望むのはこんなふうに細やかな、けれどもこの上なく重い願いかもしれません。

とても、素晴らしい小説でした。巡り逢えたことに感謝です。

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