青い培養層の中で

最初の一文目で自分の奥深くを掴まれた。
当時太宰治と関係を持ち、離せぬまま心中を図った女性達のように。
設定も、雰囲気も、世界観も、激流のように心の中でとぐろを巻いて、気づけばこの物語に溺れている。水面から顔を出そうという気にもならない。
流れに身を任してただこの物語のピリオドへと向かいたい。そう思えた。

『グッドバイ・ブンゴー、サマー・エンジン』
この作品を書いた作者の脳が、数多の文豪の脳を収める青い培養層の1つの中にないのが、不思議でならない。

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