太宰が好きじゃないすべての人に贈る

私は太宰が好きではない。
作中でも主人公の後輩が言っていただろう。「軟弱な……」と。その軟弱さはどうやら死んでも治らなかったらしい。「馬鹿は死んでも治らない」という良い例ではないだろうか。
主人公は太宰に対して興味のない男である。しかし物語が終盤になるにつれ、「安眠」を妨げた詫びに彼のために何かしてやろう、という気にさえなっているのだ。
太宰は結局、男だろうが女だろうが籠絡してしまう「ひとたらし」であり、人に何かしてもらわないと生きていけない「軟弱」な男である。
そして人は思ってしまうのだ、「彼のために何かしてあげたい」と。
その「太宰治」という男の一端をよく表しているというだけでも私はこの作品を愛するに足ると思う。
なので是非とも太宰のその「ひとたらし」を好かない人に読んでもらいたい。
読後に「ああこいつはこういう奴だ」と嘆息したくなるだろうから。その嘆息をつくまでのクオリティの高さを味わってもらいたい。

この脳は、ずるい。

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