季節殺し

作者 夢見里 龍

61

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★★★ Excellent!!!

麗らかな春、力強い夏、色づく秋、凍てつく冬ーー。
私たちの世界にも当たり前のように存在する『季節』を巡る物語。
舞台は、『春』が死に絶え長きにわたり『冬』に閉ざされた街。そこへ、美しい少女を連れた不思議な旅人が訪れる。彼によって徐々に暴かれてゆく、『冬』に閉ざされた街の壮絶な過去。そして、『季節殺し』とはーー。

大変美しい物語でした。長きにわたる冬の中で、独自の暮らしを構築している人々のたくましさ、春を願う心優しき少女、街を守ろうとした人々の決意、季節を愛し愛される旅人、そして、生きた『季節』たち。その全てが美しく、儚げで、とても心を打たれました。

美しい文章や物語、幻想的な物語がお好きな方に、ぜひご一読を勧めたい作品です。

★★★ Excellent!!!

緻密に構築された世界観、風の匂いや陽射しの音までも繊細に描かれるその筆の運びを追ううちに物語に引き込まれてゆきます。

そのあらすじやストーリーなどは、実際に物語に触れて感じて頂きたい。
その物語を彩る景色が、世界が、そこに生きる人が美しければ美しいほど、私の胸はほんのわずかに締め付けられ、鼓動を速めるのです。
今、読み終え、切なく暖かな微笑みが知らぬ間に頬に浮かんでいます。

心のうちの円環を、世界の連環へと。
冬を知るからこそ、春を笑える。
そう思います。

★★★ Excellent!!!

細かい小道具や、料理、農作物、家の構造にその土地の歴史とそこから派生した習慣や思想、そしてそこに棲まう人々。
この物語の世界観には、まるで筆者の夢見里 龍さんがまるで実際にその世界を長い年月をかけて観測してきたかのような説得力があります。

情景描写の精細さもその強い説得力に一役買っています。
吹き込む空気の甲高い音。慈悲も悪意もなくただ降り積もる雪の持つ力。そして黄金色の陽光と、それを受けた者の表情。
瞼を閉じればありありとその情景が思い浮かぶような文章は、それだけでほぅと息を漏らしてしまいそうなほどに耽美です。

時計の針が何周もし、陽が何度も沈んでは昇り、人の世では改革が続き、足は幾度も踏み出され、季節は巡り続けた。それ程の長い長い時間の一部の物語が、この季節殺しであると感じます。
この物語は幻想譚であり、とある世界の歴史書でもあり、その世界を観測した者の日記でもあります。それはファンタジーと呼ぶにはあまりにも濃密な在り方で、だからこそこの作品は至上のファンタジーたりえる。

ファンタジーとはこうでありたい。心底そう思える作品でした。

★★★ Excellent!!!

常世の冬に守られた町。
その町の住人たちは《春》を知らなかった。
ただ、そんな中でハルビアだけはまだ見ぬ春に恋い焦がれていた。
そこへやって来たのは季環師の青年と妖精と見紛う美しき少女。
青年は言います。雪深い町を前に、今の季節は《春》だと。
自分は留まり続ける季節を巡らせるためにやって来たのだと。
しかし、《春》を見たいと望む少女の願いを知りながら、村長たちは余計なことはするなと秘密裏に動き出します。

何故町は冬に閉ざされたのか。《春》を殺したのは誰なのか。
物語はその秘密を探る物語。

その世界を綴る文章は、雪国特有の冷たさを伝えて来ます。痛いほどの冷たさ。その中で身に染みる建物の中の暖かさ。雪原の様子。冬の森。吐く息は白く世界は煌めく。
物語がクライマックスを迎える中での《春》が一時蘇ったときの描写など、冷たく痛い空気が溶かされ、温かく花の匂いが香る風が頬を撫でるかのような錯覚を覚えるほどに美しいです。
本当に、絵心があったなら、是非にも絵にしたい描写の数々が読み進めた読者の目に飛び込んで来るはず!

誰が悪いわけではなく。誰もが誰かを守るために立ち上がり決行した末に訪れた未来。変わることを拒絶した世界で、たった一人の《春》を待ち望んだ少女の願いが叶う様を、是非一緒に見守って下さい。

★★★ Excellent!!!

 季節——春を失ってしまったせいで、永遠に冬が続く町に、季節の循環を修正する季環師がやってくる。
 何故何十年もの間、春はこの町に来ないのか。春は、どこへいってしまったのか。春は、殺されてしまったのか。殺されてしまったとしたら、なぜ。
 季環師のセツが謎解きをしていく物語です。
 
 文章がともかく美しいです。文章を目で追うだけで、その美しさに魅了されます。
 そこに描かれている情景も見事に美しいです。
 
 そして、この物語の魅力は文章のみならず、その独特の不思議な世界観。季節が生きていること、季節が実体を持っていること、そして季節が殺せること。非常に魅力的で、物語に浸れました。
 真相はちょっと泣きました……。痛ましい……。

 美しい物語を堪能したい方にオススメです。

★★ Very Good!!

かそけき季節の呼び声を辿り、季環師の青年が辿りついたのは、雪に塞がれた常冬の街。
永遠の冬が覆う街で、彼が出逢ったのは、春の名を与えられた少女。
春を知らない少女はひとり、雪の綻びを待ち続ける。
柔い春の、莟むのを。

羨望。欲望。激情。畏怖。
人は季節を求め、畏れ、そして愛する。

春は殺められ、冬は眠りを奪われる。

けれど、季節はそこに在る。
そこに、美しく在り続ける。

季節を巡る幻想譚。
その一頁を、今。

★★★ Excellent!!!

「季節を殺す」とはどういうことだろう……?
執筆をなさっているときからずっと気になっておりました。
そして読み始めると期待以上にこの世界に引き込まれました。

 季節の循環を生業とする者が、春を封じ冬に閉ざされ続ける町を訪れる……。

 不思議な設定であるのに、そこに息づく人々が確かにいると感じられる描写は、すんなりと読む人を物語りの中へ誘うでしょう。
《冬》の町に住む人々は助け合い、つましく暮らしています。想像できる風景は西洋風であるのに、どこか日本の雪国のような趣も感じました。

 この物語における季節のありようには、厳かで慈愛に満ち、胸を打たれます。最初は神のような存在かと想像していたのですが、そう喩えるにはあまりに清らかで純粋なものでした。生き物の形をしていても、決してわたしたちの知る生き物なのではない、美しすぎて恐ろしいと感じるほどでした。
 対して「季節殺し」の真実が詳らかになるにつれ、浮き彫りになる人の業、愛故の罪は生々しく痛ましい。
 そして季環師であるセツは、人でありながら人であることを手放したような存在に見え、妖精のようなクワイヤはときにセツよりも人のように豊かに感情を表すところが興味深かったです。

 大人のための幻想譚でもあり、自然の厳しさと美しさや人としてのあり方を問う童話のようでもあります。

 春が待ち遠しいこの季節に読むと、一層この物語に愛着を覚えます。
 いつか、ここには描かれていない季節の物語も読んでみたいです。

★★★ Excellent!!!

季節は常に回る。
春が冬の終わりをつげ命に始まりを告げる。
夏が命を育み、命もそれに答えるように生命の息吹を燃やす。
秋には植物たちが実りを告げ、動物たちはその実りを頂き冬に備える。
冬には積もった雪が春に流れる水となる。
季節は回る。──だが愚かにも人間は季節を殺した。

物語の主人公であるセツは冬にとらわれた村を訪れる。冬特有の患いや、春を望まない人々。その中でただ一人。「春」の名を持つ少女と共に原因を探っていく。
丁寧な言葉選び。綺麗な情景を思い浮かべさせる単語。そして、セツの軽妙な言葉とは裏腹な季節への想い。
とても良いものを読ませていただきました。ここにレビューとしてこの物語のすばらしさを伝えたいと思います。

★★★ Excellent!!!

 これは季節の調停者である季環師の物語。この物語の中で、季節は生き物であり、殺されたり、生まれたりする者なのだ。それは単なる季節の擬人化ではなく、本当に人間のような存在として、物語に登場する。ハイファンタジーというと、ヨーロッパ風だったり、中華風だったり、ウェスタン風だったりするが、この物語はずっと《冬》の町だ。これだけでも、今までになかったファンタジー作品であることは、言うまでもない。
 季環師のセツが訪れたのは、長い間《冬》が留まる雪の町。ここには《春》が訪れるはずなのに、もう何十年も《冬》がいる。雪国の暮らしぶりが見事に描写され、冬の世界観に圧倒される。温泉を利用した流雪溝や、樹氷の表現などがリアルで、そこに住む人々の生活が感じられる。雪国特有の閉鎖的な人々の様子や、頑なな人々の心までもが、上手く表現されていて、驚いた。そこに巧く「冬患い」や「春の祟り」など、この物語の鍵となる表現が織り込まれている。
 そして季環師のセツには相棒と呼ぶべき《光季の姫》がいる。空を駆け、セツを助け、まるで妖精のような美しい少女だ。しかしこの《姫》は他の《季節》たちが敵わないほど、強いのだ。
 さらに、キーパーソンとなるのは、冬の町で唯一よそ者のセツに優しく、春を待ち焦がれる娘・ハルビアだ。このハルビアの家系が春に祟られているとされている。そして、ハルビアを取り巻く人々が、セツと接点を持ちながら、物語は進んでいく。マレビト的なセツとパラドクス的存在のハルビア。
 
 果たしてセツは季環師として、人々を《冬》から解放し、《春》を呼ぶことが出来るのか?

 異世界ファンタジーやハイファンタジーが苦手な方、飽きてしまった方にもお勧めの一作です。

 是非、ご一読ください‼