★★★ Excellent!!!
ほんもののことば 木野かなめ
季節を調停し、季節の流れを”あるべき姿”に変える力をもつ、セツ。
彼は『季環師』として世界の各地を旅していた。
セツが『季節の声』に呼ばれ、ともに生きる少女クワイヤと訪れたのは『冬の砦』を越えた先にあった小さな町。そこでは季節が失われており、厳しい冬の息吹だけが町中を吹き抜けていくのだった――。
私は本作の筆者、夢見里龍さんの友人です。友人の書いた小説がどんなものかと思い遊びに来ました。彼女は日頃、ことばに対して高い意識をもっています。「うつくしいことばをさがしている」とも言っていました。そしてただ茫洋と探しているだけではなく、彼女は結果を出しています。あの名門電撃小説大賞の最終選考候補者。そのように凜然と輝く実績をおもちなのです。なので私は本作を読むにあたり、どのような言葉が選ばれ、そして並べられているのかというところを楽しみにしていました。
この物語のタグをよく見ていただきたいのですが、「ライトノベル」と「ヘビーノベル」という一見相反するタグがつけられています。これは筆者が意図してつけたものです。まず、本作は間違いなくライトノベルの範囲に含まれるでしょう。中学生や高校生の語彙力であっても、詰まることなく読み進めていくことが可能だからです。丁寧な風景描写。人物の仕草。物語を彩る料理や町の様子。なにより私たちが普段訪れることのできない架空の町、そして人の『こころ』が描かれています。いわゆる、良質なファンタジー作品であります。お世辞抜きで読みやすかった。シーンごとの場景が頭の中にすっと入ってきて、見せ場ではドキドキしながら次のエピソードへと進みました。この「読みやすさ」と「不思議さ」と「異世界感」。この要素をもって、本作は間違いなくライトノベルであると評価することができます。
一方で、筆者は本作を「ヘビーノベル」であるとも定義づけています。ここには筆者の、『ことば』に…
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