雨が止んだら 〜モラハラ夫からの解放〜

@sumire0108

第1話 出会い

 〜待ち合わせ〜


 新宿ルミネ前13時

 私は指定された場所で待っていた。

 相手は友人から紹介された男の子

 仕事が忙しく恋愛をおやすみしていた私に友人が紹介してくれた人、、、

 何度かメールのやりとりをして、写真も送り合い、一度飲みに行きましょうと誘われた。

 正直そんなに乗り気では無かったが、気晴らしに飲みたい気分だった事もあって了承した。

 過ぎゆく人達に目線を送る。

 まだか、まだかと思っていた所に声をかけられた。

「あっはじめまして。」

 話しかけられた方を見ると、170cmくらいの顔は山田孝◯に似た感じの男の人が立っていた。

 

笑顔が無く、少し猫背に下を向いた感じの姿勢で

「じゃ行きましょうか」と前を歩いていく。

 あまりいい印象では無かった。

 とりあえず、少し距離をあけながら後ろを歩いていく。あまり長居しないで嫌ならすぐ帰ろうなどと考えいると、


「ここでいいですか?」と居酒屋の前で立ち止まった。そこは大衆居酒屋といった感じで、中は多くの人がザワザワと騒いでいた。


「いいですよ。」と言うと


「予約しようと思ったお店があったんですが予約埋まってしまってて、すみません。何件か電話したんですけど、、、」と謝られた。


「いえ!こういう所好きですよ!全然大丈夫です!」と笑顔で返した。


「じゃ。」

 と言って、先に居酒屋の中に入る彼の後をついていく。

「2名で」

 店員さんに人数を伝えると席に案内された。



 席に座り、飲み物を注文する。

「ビールでいいですか?」

「あっはい!」


 店員さんにビールを頼む。5分くらいしてビールが届く。


 …きまずいな…


 彼はメニュー表に目をやりなかなかこちらを向こうとしない。きまずさに耐えかねてこちらから話しかける。

「あの、、、カンパイしませんか?」


 はっとした顔をしてこちらをみる。

「もう届いてたんですね。すみません。カンパイ。」


 カチャン


 グラスが重なる音がした。


 一口ビールを飲む。

 すると彼は小さな声で

「…じめまして。ユウです。仕事は不動産の事務をしています。出身は秋田で、住んでるのは東中野です。」

 と自己紹介をしだした。


 メールのやり取りで知っていた情報だったので、丁寧な人だな、、、と思った。


 私も続く。「はじめまして!サワです。仕事は美容師をしています。28歳同い年です。出身は千葉です。今も千葉にすんでいます。」

 と答えた。


「なんかお見合いみたいですね、、、」と照れながら頭をかく彼はやはり目を合わせようとはしない。


 私から話を振る。

「いつから東京にいらっしゃるんですか?」


 彼が少し間を置いて答える。

「10年前くらいです。」


 話が続かない…。


 次の話題を考えていると、


「サワさんはどのくらい彼氏居ないんですか?」と聞いてくる。


 唐突だなと思いながらも答える。

「3年くらいです。」


「そうなんですか。」

 また話が止まる。


「えっとお酒はよく飲みますか?」

 なんとか話題を作ろうとする。


「はい!飲みます。前の職場では毎日接待だったので。」


「前の仕事は何されてたんですか?」と聞くと

急に雄弁になり話し出した。


「前は株の取引をしてたんです。年収は今より倍くらいあったんですけど、仕事と接待で寝る時間も無くて。ニューヨークの取引もしなきゃいけなかったので、昼夜バラバラだし、身体壊しちゃったんですよ。それで今の会社に転職したんです。」


「そうなんですね、、、。」

 急に喋り出したので少し面食らっていると、


「すみません。写真よりお綺麗なので緊張してしまって。」と恥ずかしそうに下を向いた。


 …あっ緊張してたのか…

 少しほっとした。


 それからはお酒も入った事もあり、話が弾んだ。

 出身地の話、家族構成や、今の仕事の話。

 同じ歳なので、共通の話題も多かった。


だいぶビールの空ジョッキが増えたところで、今までの恋愛履歴の話になった。

何人くらいと付き合ったのかから始まり、どうして別れたのか、、、など少し突っ込んだ話をした。


すると彼はビールを口に煽りながらボソッと

「俺、みんな自然消滅しちゃうんだよねー。お互い冷めちゃうっていうのかな?別れ話とかしたことない。」と呟いた。


「えっ勝手に別れちゃうの?相手びっくりしない?」とすかさずつっこんだ。


「ちがう!ちがう!相手から。相手が急に連絡しなくなるんだよ。」


少し違和感を覚えたが、

「そうなんだ。それは嫌だよね。」と答えた。



そんな会話をしながら何時間か経った頃、


「そろそろ行こうか。終電無くなっちゃうでしょ?」と彼が席を立った。


 そのままお店を出ようとするので、

「あっお会計は?」と聞くと


「もう払ってあるから大丈夫だよ。」とにこっと笑った。

…払っといてくれたんだ…気遣いが嬉しかった。


「ありがとう、、、。」

 私も笑顔で返し駅に向かう。


駅に着くと私の使う改札口まで送ってくれた。

改札からホームに向かうまで、こちらを見て手を振っていた。

私も後ろを振り返り、手を振った。


ホームに行き電車に乗り込むと


 ピロン


 携帯がなった。メールだ。

『今日はありがとうございました。楽しかったです。また会ってもらえますか?』


 と書いてあった。


『私も楽しかったです。ありがとうございました。』

 と返信する。


『僕はすごくタイプでした。サワちゃんはどうですか?僕の見た目。』


 直球の質問に少し面食らう。


『優しそうなかんじでいいと思いますよ。』

 当たり障りのない返信をした。





 その後何通かやりとりをしながら帰宅した。

 家につきメールをうつ。


『家につきました。』


 すぐに返信がくる。

『よかったです。無事ついて。また明日。』


『また明日』

 返信して、部屋に入る。

 その日は疲れていた事もあり、帰宅するとすぐに寝てしまった。


 …緊張してたけど、いい人だったな。…


 それが私の第一印象だった。

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