第10話 里帰り②

「こっちだよー!」

 亜子が手を振っている。


「お待たせ〜!」

 小走りで駆け寄る。


「じゃ行こうか!」

 先を歩いて居酒屋に入っていく。私も後に続く。


 席に座り、ビールを2つ頼む。

 亜子は美容師になりたての頃一緒に住んでいた。

 友達の中でも深い関係で私の事をよく知っている。


「かんぱーい!」

 グラスを合わせ、グイッと口に含む。


 …美味しい…


 半分くらいビールが減った頃亜子が話し出した。


「で、実際どうなの?」

「うん、、、なんか微妙な感じ、、、。」

 ビールをあおりながら、答える。


「だと思った。あんた肌荒れてる。あんたストレスとかあるとすぐ肌荒れるんだから。絶対なんかあったと思ったんだよね。」


 核心をつかれ、少し目が潤む。

 気づかれないようにビールを一気に飲み干した。


「とりあえず、話してみな。」と亜子は私の手の上に手を伸ばした。


 手が触れた時、その温かさで涙がこぼれ落ちた。

 止めようとしても次々に溢れ、止まらなくなってしまった。

「くっ…うっ…」

 嗚咽が漏れる。

 少し気持ちを落ち着かせてから、これまでの事を話した。



 …ドンッ…



 亜子がビールジョッキをテーブルに叩きつけた。

「信じらんない!!!」

 と声を荒げる。


「ほんとだよね。私もなんかずるずるしちゃってさ。 付き合うの久々だったし、なんか1人になるのも嫌で。 情けないんだけどね。」

と答えた。



「そんなさ、自分の価値観でしか話せない男器小さすぎでしょ!何その職業差別。信じらんない!浮気疑惑もさ、核心じゃないにしろ怪しすぎるでしょ!最悪なんだけど!」

 と声をますます荒げながら、ビールをあおる。

 

 ビールがすぐに空になっていく。


「そうだよね。ほんとその通り。」

 私もビールをあおる。


「ってかさ、どうすんの?このまま付き合うの?それでいいの?」

 亜子は心配そうに私の顔を見る。


「今はまだ考え中。やっぱりおかしいって思う所はあるんだけど、優しい部分もあるからさ。話合っていけば、お互いに歩み寄れる部分もあると思うし。もう少し様子みるつもり。」

 そう答えて、チラッと亜子をみると、

 不満そうな膨れっ面をしながら、


「まぁさ、あんたが決める事だからこれ以上は言わないけどさ、よく考えなよ。」と言った。


「うん。」と答えた時


 プルプル…プルプル…と電話が鳴った。

 着信画面を見ると、彼の名前だった。


 亜子が出な、と手で合図する。


 ペコっと頭を下げ、席を立ち居酒屋の外にでた。


「もし、もし」電話に出る


「飲んでるとこ、ごめんね。今着いたからさ。大丈夫?」

 

飲んでいる事はメールで伝えていたので、

「大丈夫だよ。無事着いたならよかった。」と答えた。


「うん。疲れたよ。まだ早いんだけど、疲れすぎたから風呂入ってもう寝ようと思ってる。また明日連絡するね。飲みすぎちゃだめだよー!」と少し眠そうな声で話す。


「わかった。じゃまた明日!」


「とりあえず、さわも帰る時と、家に帰ったらメール入れといて。」


「わかった。じゃ」と言って電話を切った。


 それから居酒屋に戻り亜子とまた飲み直す。

 2時間程たちそろそろお開きになる時にメールをしようと画面を開いた。


 …プルプル…

 発信音が鳴った。

 

…あっ間違えた。メールしようとしたら発信してしまったのだ。電話を切ろうとした瞬間


 …プープー…

 電話を切られた。


 あれ?…へんな胸騒ぎがした。

 もう一度電話をかける。


 …通話中…


 とりあえず、席を立ち店を後にした。

 そして、亜子と別れた後もう一度電話をかけた。


 …通話中…


 さっき電話してから30分以上経っていた。

 …誰かと話してる?…胸騒ぎがしながらも家に向かって歩いた。



 それから30分後

 プルプル…着信音が鳴った。

「もしもし。」

 電話に出る。

「ごめん。寝てた。どうしたの?」と彼が言う。


「えっ寝てたの?何度かかけたら話中だったけど、、、」


「えっ、、、寝てたよ?もしかしたら寝ぼけてへんなボタン押しちゃったかもしれない。ごめん。もう帰るとこ?」


「もう帰るとこだけど、、、」と話を続けようとしたが、遮るように、


「そっか。もう遅いけど、周り暗くない?へんな人とか居ない?気をつけて帰ってよ。家着くまで電話してる?」と続けて言われた。


 電車に乗るところだったので、「大丈夫。起こしてごめんね。」と言って電話を切った。


 電車に乗っても、何通も『ついた?』『大丈夫?』とメールが来ていた。


 何通かやりとりをしている間に家に着いた。


『ついたよ。』とメールをすると

『こんなに遅くなったら、心配するよ。今度からはもう少し早く帰ってね。』とメールが返ってきた。

『ごめんね。』とメールを返した。

『心配させないで。おやすみ。』

『おやすみ』

 そんなやりとりをしてその日は寝床に入った。

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