第14話 捨てないで②

身体は冷え切り、まるで氷のようだった。

足の感覚がない。

指先も冷えて感覚が鈍くなっていた。


彼のマンションの前についた。

インターホンで部屋番号を押す。


数分待つとカチャンという音と共にオートロックのドアが開く。


彼の部屋の前まで歩く。

いざ彼の部屋の前に行くと足がすくんだ。


ふっーと息を整えドアを開ける。



ガチャ

いつもよりもドアが重く感じる。

ドアを開けて部屋に入る。




…いない。





ザーッとお風呂場で音がした。


今のうちに荷物を持っていこう。そう思って荷物をまとめる。

荷物を鞄に詰め込み、出ていこうとした瞬間

後ろから声がした。


「出ていくの?」




「うん。」

後ろを見ずに答えた。






「…願い…」

小さな声で彼が呟いた。





聞こえないふりをした。





「お願い。捨てないで。」ガタッと音がした。


振り返ると彼が膝をつき床に突っ伏して泣いていた。


「もう1人にしないでよー!」

叫びながら泣き続ける。




「無理だよ。信用出来ない。」荷物を強く握りしめながら答えた。




「何だってする!女の子の番号も全部消す!gpsつけるよ!さわが安心するなら何だってするから!」


と床に突っ伏した体制を土下座の体制にして言ってきた。




また頭がグルグルする。

頭を動かそう、考えようとすればするほどモヤは濃くなっていく。




「でも、、、もう無理だよ。」

言葉を絞り出した。





「これが最後でいい!最後に信じて。ほら、これ!」

と言って、プリントを数枚出してきた。


目をやるとそれは賃貸情報だった。





「さわの住んでる部屋の近くを探したんだ。さわは今の住んでる場所、実家も近いし友達も居るから引越したくないでしょ?

だから、さわの部屋の近くで2人で住める場所。2人で住めば心配もないでしょ?ねっ?一緒に住もう!」





「えっ、、、。」

頭の中はモヤで埋め尽くされ、頭がぼーとし始めた。


私の手の中に彼は彼の携帯を渡してきた。



「はい。女の子の番号消して?もう要らないから。ねっ?」

矢継ぎ早に喋り続ける。


「さわがいるならもう誰も要らない。さわがいればいいんだ。ね?ほら。さわが居なかったら俺ダメなんだ。

さわが居なきゃ生きられないんだ。

さわが居なかったら、自分がどうなるかわからない。だから、、、

ね?ほら。お願いだから。ね?」




そう言い終わると急に彼は笑顔になり、

「どの物件がいいかなぁ!」と賃貸情報のプリントをペラペラとめくりだした。


私はそんな彼をぼーと見つめていた。


頭はモヤでいっぱいになり、目眩と耳鳴りでヘタリと座り込んだ、、、。

力が入らない。

ぼっーと彼を見つめる。



彼は笑いながら賃貸情報のプリントを見続けている。






モヤは私を包み込み、目の前は真っ白になっていた。


「ほら!早く消して!」

彼の声が響く。



思考停止した私は言われるがまま、彼の携帯を操作する。


「早く部屋みようよ!」

彼が笑いかける。手をとられ、隣に座らされる。


頭は思考停止したまま、、、、





ふっと遠くで声がした気がした。

引きかえすなら今だよ。

やめなさい。と、、、、、


ぎゅっ



彼は笑いながら私の手首を強く握りしめ続ける。

それはまるで手錠をかけられたようだった。

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雨が止んだら 〜モラハラ夫からの解放〜 @sumire0108

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