第7話 侵食

次の日

彼は30枚ほどの紙をファイルに入れたものを渡してきた。

それは赤ペンで線をひかれている。

パラパラと目を通す。


そこにはジョブ〇〇、タウン〇〇といった文字

求人情報だった。

赤ペンで線をひかれた部分に目をやると

そこには職種事務とかかれ、休み土日

時間17時まで残業なし


と書かれていた。

「これさ、、、事務って書いてあるけど私事務やったことないよ?」


「大丈夫だよ!パソコンなら教えるから!俺ブラインドタッチ早いし。」

パソコンを開きながら話続ける。

「ほら!このゲーム、文字が出てくるでしょ?それを打っていくの。これを続ければ早く打てるようになるから家でやってればいいよ。」

と得意げにやってみせる。

「うーん。でもやっぱり経験のある仕事の方がいいかな。アパレルならやった事あるし、販売とか接客の方が今までの経験とかも活かせるかもしれないし、、、」と言うと


彼の顔から笑顔が消えた。

すっと真顔になりパソコン画面からこちらに向き直る。

「あのさ、、、前から言おうと思ったんだけどさ。

もう28だよね?それでパソコンも打てないっておかしいでしょ?販売だって若い子の方が良いに決まってるでしょ。もうさ歳考えなよ。

その髪の毛の色もさ明るいのおかしいの解らない?服装だってもっとさ歳相応の格好しなよ。

仕事もさ、色々考えて事務がいいって言ってんの。わざわざ調べてコピーして赤ペンひいてさ。

仕事の合間ぬって、わざわざやってきたんだよ。

誰の為だと思う?さわの為なんだよ?

これから先の事考えてだよ?

俺は2人のこれからを考えてやってるんだよ?」


…まただ…

そう思うと同時にまたモヤがかかってくる。

振り払おうとしてもモヤは濃くなっていき絡まってくる。

…クルシイ…

息がしずらくなってきた。


その間も同じような事をずっとまくしたてている。

キーンという音とともに耳が痛くなってきた。


「わかったから!かんがえてみるから!」

もう終わらせたくてそう答えた。


すると彼もぶつぶつ言いながら部屋を後にした。


…終わった…

どっと眠けが襲ってきた。

ベッドに倒れかかるようにしてそのまま横になった。体がベッドに吸い込まれるように眠りについた。

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