放浪者の青年が迷い込むように訪れた不思議なカフェ。その秘密は——?

 春の昼下がり、「僕」は坂道の上の細い路地の向こう側で不思議なカフェを見つけます。そこで出会った女主人に声をかけられた彼は、彼女に勧められるままに、そのカフェで住み込みで働くことになり——?

 冒頭の丁寧で美しい描写に、主人公の青年とともにその不思議なカフェに迷い込んでしまう様子がありありと目に浮かぶようでした。

 一話完結のオムニバス形式で、そのどれもに少し不思議な、けれどほっと心温まる結末が用意されています。ただほのぼのしているだけでなく、時には少しびっくりしてしまうような不思議な生き物や(「第003話 観賞小人」)、スパンと頬を張られるような小気味の良い結末を迎えるお話も(「第009話 古き良き新しき七月の夕べ」)。

 季節に合わせた、珍しくもとっても美味しそうな紅茶やデザートが毎回登場するのも魅力です。

 ぜひ午後のティータイムや、リラックスしたい時におすすめの一作です。

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