たかがカビと侮るなかれ 手に汗握る、秀逸なパニック群像劇

ただのカビ、されどカビ。異常な繁殖力を得たカビが世界を覆い尽くす恐怖と、その困難に敢然と立ち向かう人々を描いた傑作です。時折差し挟まれる専門用語やらはスパイス程度。むしろこの作品の凄さは、次々と登場するキャラクターの簡潔かつ緻密な描写にあります。

オーストラリア、ケニア、アイスランド、アラスカ、日本という世界中を舞台に、そこにいる様々な人々の不安や恐怖、焦り、希望、解決に向けた強い意志、それらを事細かに、なおかつ飽きさせることのない筆致でグイグイと読ませる。パニックを描いた群像劇として、そうはお目にかかれない面白さ。

そして登場人物が決してへこたれないどころか、危機に向かって立ち上がるのが良い!終盤の「チーム筧」の活躍ぶりとか、手に汗握りながらも最後は喝采を叫びたくなること請け合い!

息もつかせぬ映画鑑賞体験に似た味わいが間違いなく約束された本作、是非ご一読ください!

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